不動産を売買するときには税制面で色々な優遇があったり、逆に知っておくべき税金があったりします。しかし、それらの多くは入居用不動産を売却するときの話であり、事業用不動産の売却時はあまり触れないことが多いです。
しかし、実は事業用不動産を売却するときは、プロでも知らない注意点があります。その注意点は「税金」と「REITの運用会社への買取」という2点になるので、今回はこの2点について詳しく解説していきます。
事業用不動産を売却するときの税金
1つ目は、事業用不動産を売却するときの税金についてです。事業用不動産は「買い替え」であれば税金の特例があり、特例を利用すれば節税につながります。この点は意外と知られていないので不動産投資家なら頭に入れておきましょう。
そもそも何の税金がかかる?
そもそも事業用不動産を売却したときには、譲渡所得税という税金がかかります。譲渡所得税は以下の計算式で算出される売却益(譲渡所得)に対して課せられる税金です。
譲渡所得=(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時の不動産価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用)
要は、単純に売却価格から購入時の価格を差し引くのではなく、それぞれの諸費用と減価償却した分を加味して計算します。また、上記で算出した譲渡所得に課せられる税金は、その不動産を売却した1月1日時点で保有期間が5年を超しているかどうかで税率が異なります。
長期保有の税率
仮に、1月1日時点で保有期間が5年超の場合の税率は以下です。
- 所得税:譲渡所得額×15%
- 復興特別所得税:上記の所得税額×2.1%
- 住民税:譲渡所得額×5%
短期保有の税率
仮に、1月1日時点で保有期間が5年以下の場合の税率は以下です。
- 所得税:譲渡所得額×30%
- 復興特別所得税:上記の所得税額×2.1%
- 住民税:譲渡所得額×9%
上記のように、たとえ長期保有の場合でも税率は高いと言えます。
3,000万円の特別控除を利用できない
不動産売買時は3,000万円の特別控除という税制優遇があり、入居用不動産を売買したことがある人は聞いたことがあると思います。この特例は、譲渡所得を3,000万円差し引いてくれるので、よほど売却益が出るときしか税金がかからない優遇です。
ただし、この税制優遇は基本的に入居用不動産の売買時しか適用されず、投資用不動産の売買時は利用できません。
事業用の不動産を買い換えたときの特例の概要
さて、冒頭でいったように事業用不動産を買い替えたときには特例があります。この特例を利用できるかどうかで支払い税金は大きく変わってくるので、以下の点を理解しておきましょう。
- 特例の概要
- 節税になるポイント
- 利用できる条件
特例の概要
この特例の概要は、自分が所有している事業用不動産を売却して、一定期間以内に別の不動産を購入したときに利用できる特例です。ただし、購入した不動産も購入後から1年以内に事業用不動産として運用している必要があります。
つまり、入居用不動産から事業用不動産への買い替えや、事業不動産を売却して入居用不動産を購入したときには利用できない制度です。あくまで、事業用不動産を売却して、事業用不動産を購入するときだけ適用できます。
節税になるポイント
節税になるパターンは2パターンあり、まずは購入金額の方が売却金額より高いケース(購入金額>売却金額)から解説します。この場合、「売却金額×20%」を譲渡所得から差し引くことができるので、必然的に譲渡所得税も減額になります。
2つ目のパターンは、逆に売却金額の方が購入金額の高いケース(売却金額>購入金額)です。その場合は、「購入金額×20%」を譲渡所得から差し引くことができるので、1つ目のパターンと同じように譲渡所得税の減額につながります。
このように、事業用不動産の買い替え時は譲渡所得の優遇があるので、もし近い将来に事業用不動産を購入する予定があるのであれば、買い替えの扱いにした方がお得です。これは、売却益をタンス預金するでのはなく、再度投資に回してもらうことを促すための優遇になります。
利用できる条件
ただ、この特例は全ての事業不動産売却時に適用されるわけではなく、「組み合わせ」の条件があります。この組み合わせ条件は複数あるので税理士に確認した方が良いですが、代表例としては以下の組み合わせです。
- 売却不動産が東京23区や大阪市など事務所などに利用されており、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年超
- 購入不動産が東京23区や大阪などの既成市街地でない地域であること
このパターンでいうと、長期保有かつ都市部から地方の不動産へ資産の組み換えをしているので、この特例が利用できるということになります。
REITの運用会社への買取
2点目は、REITの運用会社への買取を検討するということです。簡単にいうと、個人投資家だけでなく、REITの運営会社である投資法人もターゲットになり得るという話です。そもそもREITとは、投資家からお金を集め、そのお金で不動産を購入し収益を投資家へ分配するという仕組みです。
そして、それが不動産投資信託(REIT)として上場されているので、投資家は株を買うようにREITを買うことができるというわけです。つまり、投資法人が購入する不動産の一角に、自分の不動産を組み込んでもらえることができれば、投資法人に購入してもらえるかもしれません。
ただ、その場合は区分所有だと規模が小さいので、基本はマンションの一棟売りになります。また、REITの投資法人を出口として検討出来る企業は、ファンド系など限られた企業だけです。
そのため、収益マンションの一棟売りを検討している方は、投資法人への売却も出口の1つとして検討しましょう。そうすれば、ターゲットが広がり売却しやすくなります。
まとめ
このように、事業用不動産は税制優遇があります。ただ、あくまで事業用不動産の買い替え時なので、売却後に事業用不動産の購入を検討しているなら、特例が利用できる期間内に買った方が良いでしょう。また、マンションの一棟売りの場合には投資法人への売却も検討することをおすすめします。
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