マンション価格は現在上昇していますが、具体的にどのくらい上昇しているか知らない方は多いです。また、マンションの売れ行きを確認するときは、マンション価格だけでなく、実際にマンションが契約されているかを確認しなければいけません。
そこで今回は、マンション価格と契約率のデータからマンションの売れ行きを解説します。マンションの売れ行きは、今後マンションを購入する人も売却する人も知っておくべき要素です。
新築マンションの価格
まずは、新築マンションの価格がどのように推移しているかを確認しましょう。新築マンションの価格がどのように推移しているかで、ある程度マンション需要がわかります。
なぜなら、マンション需要があるなら価格は上がっているはずですし、需要がないなら価格は下がっているはずだからです。
そのため、以下の価格推移を見ていきましょう。
- 首都圏の新築マンション価格推移
- 近畿圏の新築マンション価格推移
マンション価格はエリアによって異なります。ただ、首都圏と近畿圏のマンション価格推移を見ておけば、ある程度全体的な価格推移はわかります。
首都圏の新築マンション価格推移
国土交通省※と不動産経済研究所※のデータを総合すると、首都圏の新築マンション価格は以下のように推移しています。
- 2008年:4,775万円
- 2009年:4,535万円
- 2010年:4,718万円
- 2011年:4,578万円
- 2012年:4,540万円
- 2013年:4,929万円
- 2014年:5,060万円
- 2015年:5,518万円
- 2016年:5,490万円
- 2017年:5,908万円
このように、2013年以降は新築マンション価格が右肩上がりであり、2017年の5,908万円のという価格は、過去20年遡ってももっとも高い金額です。つまり、現在のマンション価格は単に「高い」だけでなく、近年稀に見る高さということです。
※参考:不動産経済研究所
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/317/z2017.pdf
※参考:国土交通省 住宅建設の動向-3-(8)参照
http://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2_tk_000002.html
近畿圏の新築マンション価格推移
次に、以下近畿圏の新築マンション価格の推移を見ていきましょう。
- 2008年:3,549万円
- 2009年:3,411万円
- 2010年:3,452万円
- 2011年:3,490万円
- 2012年:3,438万円
- 2013年:3,496万円
- 2014年:3,647万円
- 2015年:3,788万円
- 2016年:3,919万円
上記のように、近畿圏のマンションも2012年から価格が右肩上がりになっており、とくに2015年と2016年の上昇率は大きいです。また、近畿圏の新築マンション価格も首都圏と同じく、過去20年間の中でもっとも高い水準となっています。
このことから、首都圏だけマンション価格が高騰しているわけではないということがわかります。新築マンションに絞ると、全国的にマンション価格は上がっており、いずれも近年でもっとも高い水準であるということです。
※参考:国土交通省 住宅建設の動向-3-(10)参照
http://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2_tk_000002.html
中古マンションの動向
さて、前項までで首都圏も近畿圏も新築マンション価格は高水準であることが分かったと思います。
ただし、一般個人がマンションの「売却」をするときは、新築マンションではなく「中古マンション」というカテゴリーに分類されます。
新築マンションと中古マンションの価格はある程度連動するものの、ここでは中古マンション価格も確認しておきましょう。
首都圏の中古マンション価格の推移
首都圏の過去10年間の中古マンション価格推移は以下の通りです。
- 2008年:3,128万円
- 2009年:2,824万円
- 2010年:2,965万円
- 2011年:2,979万円
- 2012年:2,863万円
- 2013年:2,791万円
- 2014年:2,851万円
- 2015年:3,070万円
- 2016年:3,476万円
- 2017年:3,577万円
上記のように、首都圏の中古マンション価格も新築マンション価格と同じく右肩上がりであり、過去を振り返っても非常に高い金額であることがわかります。
※参考:東京カンテイ
https://www.kantei.ne.jp/report/c2017.pdf
近畿・中部圏の中古マンション価格の推移
次に、新築マンションのときと同じように、近畿・中部圏の中古マンション価格推移を確認しましょう。2008年からの近畿・中部圏の中古マンション価格推移は以下の通りです。
- 2008年:近畿1,873万円、中部1,509万円
- 2009年:近畿1,800万円、中部1,509万円
- 2010年:近畿1,823万円、中部1,541万円
- 2011年:近畿1,823万円、中部1,528万円
- 2012年:近畿1,799万円、中部1,492万円
- 2013年:近畿1,807万円、中部1,482万円
- 2014年:近畿1,817万円、中部1,489万円
- 2015年:近畿1,861万円、中部1,539万円
- 2016年:近畿2,037万円、中部1,627万円
- 2017年:近畿2,118万円、中部1,711万円
近畿圏・中部圏は首都圏ほどではありませんが、それでも中古マンション価格は右肩上がりであり、ここ2年間の上昇率は非常に大きいです。また、過去2年間で現在がもっとも高い水準になっています。
このように、新築マンションと中古マンションの価格がおおむね連動していることから、マンションの購入検討者は新築も中古もどちらも検討している人が多いことがわかります。
つまり、新築マンションが上昇すれば中古マンションも上昇するので、新築マンションの購入意欲が下がれば中古マンションの購入意欲も下がる可能性が高いということです。
新築・中古マンションの販売戸数
前項までで、新築マンションも中古マンションも、「価格」については過去を振り返っても現在が最高水準であることがわかります。
では、販売戸数はどうでしょうか?冒頭でいったように、販売戸数が多ければマンション需要があり、販売戸数が少なければマンション需要はないということです。
仮に、新築マンションも中古マンションも販売戸数が少なければ、「マンション価格が高すぎて需要が下がっている」可能性があります。そのため、マンションの売り時とは言えないということです。
新築マンションの販売戸数
では、最初に新築マンションの販売戸数を首都圏・近畿圏で見ていきましょう。
首都圏の新築マンション販売戸数
首都圏で過去10年間に販売された新築マンションは以下の通りです。
- 2008年:43,733戸
- 2009年:36,376戸
- 2010年:44,535戸
- 2011年:44,499戸
- 2012年:45,602戸
- 2013年:56,478戸
- 2014年:44,913戸
- 2015年:40,449戸
- 2016年:35,772戸
- 2017年:35,898戸
マンション価格とは違い、販売戸数の方は過去10年間で最高水準とはいえず、過去10年間の中では9番目の数字です。ここで、マンション価格の下落率と販売戸数の乖離率を見ていきましょう。
2008年の首都圏の新築マンション価格は4,775万円で、2017年は5,908万円でした。パーセンテージにすると23.7%増です。一方、上記の販売戸数は2008年と2017年で17.2%減です。
つまり、マンション価格の上昇率よりはマンションの販売戸数は落ち込んでいないということです。仮に、マンション価格も下がり販売戸数も下落していれば「マンションの売れ行きは悪い」と言えますが、価格が上がり戸数が下がっている状態では何とも言えません。
近畿圏の新築マンション販売戸数の推移
一方、近畿圏の新築マンション販売戸数の推移は以下の通りです。
- 2008年:22,744戸
- 2009年:19,784戸
- 2010年:21,710戸
- 2011年:20,219戸
- 2012年:23,266戸
- 2013年:24,691戸
- 2014年:18,814戸
- 2015年:18,930戸
- 2016年:18,676戸
- 2017年:19,560戸
近畿圏の2017年の新築販売戸数は過去10年間の中で7番目です。こちらも前項と同様、価格の上昇率と戸数の下落率を比べてみましょう。
近畿圏の新築マンション価格は2008年に3,549万円で、2017年に3,919万円なので10.4%増です。一方、販売戸数は上記の通り、2008年と2017年を比較すると14%減となっております。そのため、近畿圏のマンション動向も首都圏と同じことが言えます。
※参考:東日本不動産流通機構
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2017.pdf
中古マンションの成約戸数
次に、中古マンションの成約戸数を、前項と同じく首都圏と近畿圏で見ていきましょう。
首都圏の中古マンション成約戸数
首都圏の中古マンション成約戸数の推移は以下の通りです。
- 2008年:28,744件
- 2009年:31,183件
- 2010年:30,347件
- 2011年:28,871件
- 2012年:31,397件
- 2013年:36,432件
- 2014年:33,798件
- 2015年:34,776件
- 2016年:37,189件
- 2016年:37,329件
上記のように、首都圏の中古マンションの成約戸数はここ10年でもっとも高い数字になっています。
上述したように、新築マンションの販売戸数自体は落ち込んでいる点と、中古マンション価格自体が上がっている点を加味すると、中古マンションの売れ行きは非常に良いと言えるでしょう。
※参考:東日本不動産流通機構
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2017.pdf
近畿圏の中古マンション成約戸数
次に近畿圏の中古マンション成約戸数は以下の通りです。
- 2008年:12,143件
- 2009年:13,088件
- 2010年:13,940件
- 2011年:14,427件
- 2012年:15,480件
- 2013年:16,681件
- 2014年:16,288件
- 2015年:17,122件
- 2016年:17,104件
こちらのデータは2016年が最新になっていましたが、2016年までを見ても成約戸数が非常に多いことがわかります。つまり、首都圏・近畿圏ともに、中古マンションは価格が高水準ながらも売れているということです。
※参考:近畿レインズ
http://www.kinkireins.or.jp/trend/nenpo/2017/pdf/1.pdf
マンションの契約率について
ここまでを簡単にまとめます。
- 新築も中古も価格は高く推移している
- 新築マンションの販売戸数は落ちている
- 中古マンションの成約戸数は上がっている
最終的にマンションが売れているかを確認するためには、もう1つの要素が必要です。それは、「実際に新築マンションは売れているのか?」という要素です。
上述したのは、あくまで新築マンションの「販売」戸数であり、中古マンションのときのような「成約」件数ではありません。そのため、新築マンションの成約件数を確認するために契約率を確認しましょう。
契約率とは?
契約率とは、新築マンションが販売されて、初月でどのくらいの戸数が成約になったかという数値です。新築マンションを販売するときは、一気に全戸の販売をすることは少ないです。「総戸数の40%程度」など、マンションによってパーセンテージは異なりますが一部を販売します。
なぜなら、「上層階だけ残ってしまった」「西向き住戸だけ残ってしまった」のような事態になると、その後のマンションの売れ行きに大きな影響を及ぼすからです。
そして、マンション契約率の好不調の境目は70%と言われています。つまり、70%を切ると、「予想より売れなかった・・・」という状態と言えます。
マンションの契約率
さて、そんなマンションの契約率は以下の通りです。
- 2008年:62.7%
- 2009年:69.7%
- 2010年:78.4%
- 2011年:77.8%
- 2012年:76.3%
- 2013年:79.5%
- 2014年:75.1%
- 2015年:74.5%
- 2016年:68.8%
- 2017年:67.3%
このように、ここ2年間は好不調の境目である70%を切っています。2年連続で70%を下回るのは、リーマンショックが起きた2008年以来のことです。そのため、新築マンションの成約件数は好調とは言えない状態です。
つまり、マンション価格は新築・中古ともに高水準で推移しているものの、新築に対する消費者の購入意欲は下がってきています。言い換えると、新築マンションの価格が高すぎると思っている人が増えている可能性があるということです。
一方、中古マンションは高価格で推移している上に、成約件数も非常に多いです。そのため、新築マンションが高いと思っている層が流れきていると考えられるので、物件を持っている方にとっては中古マンションは絶好の売り時かもしれません。
こちらも参考に↓
中古マンションを最高値で売る方法…。
※参考:国土交通省 住宅建設の動向 3.マンションの推移-(8)参照
http://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2_tk_000002.html
まとめ
このように、新築も中古も価格は高く推移しているものの、新築マンションは少々苦戦していると言えるでしょう。一方、中古マンションは高い金額で推移していながらも、成約件数も過去最高です。そのため、現在は中古マンションが高く・早く売れるチャンスと言えるでしょう。
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