マンションには、管理費と修繕積立金というランニングコストが毎月かかってきます。また、そのランニングコストは上昇することもあるので、マンションの入居者もこれらから売却・購入を検討している方も知っておくべきです。
さらに、これらの費用はエリアによって金額が異なるので、平均値を知っておくことでランニングコストが高いかどうかの判断材料にもなります。
本記事では、マンションの管理費・修繕積立金の概要を解説し、全国平均から見るランニングコストについて解説していきます。
管理費とは?
そもそも管理費とは、管理会社に支払う費用全般のことです。管理会社に管理費を支払うことで、管理会社に以下のようなことをしてもらいます。
- 管理人の常駐や巡回
- 共用部の保守や点検
- 共用部の清掃
- 入居者からの問い合わせ対応
上記のように、マンションは集合住宅という特性上、だれかが管理する必要があります。そのため、マンションには一戸建てにはない管理費というものがあるのです。
管理費が上昇するケース
そんな管理費が上昇するタイミングは以下のようなケースです。
- 共用部の稼働率が変わるとき
- 管理会社を変更するとき
- 清掃の頻度や内容を変えるとき
- 管理人の駐在内容を変えるとき
上記のケースで、とくに共用部の稼働率が変わるときが要注意。この場合の共用部とは、駐輪場や駐車場などを指します。
共用部の稼働率が変わるとき
たとえば、駐車場が月々1万円で20台設置されており、稼働率の想定が80%だったとしましょう。
この場合、月々1万円×12か月×20台×80%=192万円が管理会計として計算されています。
つまり、192万円はマンションとして収入があると見込んで、管理費が設定されるということです。
そのため、稼働率を下回ると管理費が足りなくなるので、管理費が上昇するリスクがあるということです。共用部の稼働率は重要事項説明書などに記載されているので、稼働率が高く設定されていないかチェックしておきましょう。
管理会社を変更するとき
また、管理会社を変更するときにも管理費は上がります。仮に、同じルールで別の管理会社に依頼するときにも管理費は変わることがあります。なぜなら、管理会社によって人件費などが異なるからです。
仮に管理会社を変更するときには、総会を開き入居者の過半数以上が出席する必要があります。その上で、さらに出席者の中で過半数以上が賛成したときに管理会社の変更となります。
清掃の頻度や内容を変えるとき
管理会社自体を変更しなくても、共用部の清掃頻度や内容を変えるときにも管理費は上がるリスクがあります。共用部の清掃内容や頻度は重要事項説明書(重説)や管理規約集に載っているので確認してみましょう。
管理人の駐在内容を変えるとき
さいごに、管理人の駐在内容を変えるときも管理費は変わります。たとえば、普段は管理人が巡回管理で週に3日しか来ないところを、平日の10時~17時に変更すれば、その分管理費は上がるというわけです。
管理費の全国平均価格
そんな管理費ですが、不動産流通推進センターが出典している資料※によると、エリアによって以下のような違いがあります。
- 全国:70㎡換算12,390円(㎡単価177円)
- 北海道:70㎡換算9,310円(㎡単価133円)
- 東北:70㎡換算10,010円(㎡単価143円)
- 東京23区:70㎡換算17,290円(㎡単価247円)
- 東京都市部:70㎡換算12,810円(㎡単価183円)
- 東海:70㎡換算10,780円(㎡単価154円)
- 関西:70㎡換算10,220円(㎡単価146円)
- 中国:70㎡換算8,120円(㎡単価116円)
- 九州:70㎡換算6,790円(㎡単価97円)
上記のように、管理費が最も高い東京23区では㎡単価247円ですが、最も低い九州の㎡単価は97円であり、2.5倍以上の違いがあります。この違いは、主に管理人などの「人件費」によるものです。
また、東京23区は高級マンションも多いため、コンシェルジュ付きマンションなどもあります。そのため、一部の高級マンションが単価を押し上げている可能性もあります。
いずれにせよ、自分のマンションのエリアと部屋の広さを上記の平均値と比較してみましょう。比較した上で、自分のマンションの管理費が高い割に大した管理でない場合は、内容を見直す必要があるかもしれません。
※参考:公益財団法人不動産流通推進センター 不動産業統計集
http://www.retpc.jp/wp-content/uploads/toukei/201603_5kanri.pdf
修繕積立金とは?
次に、修繕積立金を解説します。修繕積立金とは、読んで字のごとく、マンションの修繕に利用するお金のことです。修繕積立金額は、「長期修繕計画」という25年程度の長期スパンで策定した修繕計画を元に決めています。
長期修繕計画には、たとえば外壁の補修や外部廊下の補修、ほかには屋上のコーキングなど、マンション全体の修繕計画が綿密に記載されています。この修繕計画書はマンションごとで異なり、基本的には分譲時に管理会社が策定している資料です。
修繕積立金が上昇するケース
そもそも修繕積立金は、基本的に上昇する前提で策定されています。というのも、前項で解説した長期修繕計画は、マンション全体の補修を完璧に行うことが前提だからです。そのため、かなりの規模の工事を見込んでいるので、築年数に応じて修繕積立金を上げていく必要があるのです。
しかし、修繕積立金が実際に上昇するかはわかりません。事実、修繕積立金は以下の点を盛り込んでいないです。
- 運用益
- 入居者の意思
修繕積立金は、マンションの管理組合で元本保証の商品を利用して運用することが多いです。修繕積立金の推移は、その運用益は見込んでいません。また、実際に修繕積立金を上げるときには、上述した「管理会社の変更」と同じルールです。
つまり、入居者の同意がなければ修繕積立金を上げることはできないので、実際に上がるかどうかはわかりません。
修繕積立金の全国平均価格
さて、最後にこちらも管理費と同じ、不動産流通推進センターが出典している資料※で全国の平均価格を見ていきましょう。
- 全国:70㎡換算6,230円(㎡89単価円)
- 北海道:70㎡換算5,460円(㎡単価78円)
- 東北:70㎡換算5,950円(㎡単価85円)
- 東京23区:70㎡換算7,000円(㎡単価100円)
- 東京都市部:70㎡換算6,440円(㎡単価92円)
- 東海:70㎡換算6,090円(㎡単価87円)
- 関西:70㎡換算5,880円(㎡単価84円)
- 中国:70㎡換算4,830円(㎡単価69円)
- 九州:70㎡換算5,600円(㎡単価80円)
上記のように、管理費と同じく修繕積立金にも金額差があります。管理費ほどの違いがありませんが、それでも中国地方と東京23区を比較すると約1.5倍の開きです。
※参考:公益財団法人不動産流通推進センター 不動産業統計集【再掲】
http://www.retpc.jp/wp-content/uploads/toukei/201603_5kanri.pdf
ただし、修繕積立金はマンションの規模や形状などにも左右されますので、マンションによって大きく異なるケースが多いです。そのため、エリアごとの平均はあくまで参考として、自分のマンションと比較してみましょう。
また、これを機にマンションの長期修繕計画書を見直し、今後の修繕積立金の推移を見ておきましょう。その推移によってマンションの売り時が変わるかもしれません。
まとめ
マンションの管理費と修繕積立金は上昇すると負担が大きくなります。そのため、まずはそれぞれの概要を理解し、上昇リスクを認識しておきましょう。その上で、全国平均の金額を参考に比較して、自分のマンションの費用が高いかどうかを判断します。
場合によっては、管理会社の変更や修繕計画の見直しも必要なので、疑問や気になる点があれば管理会社に相談するとよいでしょう。
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