不動産を売却して利益が出た場合には税金が掛かります。実は、意外と知らない方もいるのではないでしょうか。不動産の売却益に対しての税率は高いので、不動産の売却を考えている人はしっかり把握しておきましょう。
今回は、そんな不動産売却益が出た場合の節約法をご紹介します。
譲渡所得について
不動産の売却益の事を「譲渡所得」と言います。つまり、不動産売却した時にかかる税金は譲渡所得税になります。その、譲渡所得税を計算するために、まずは「譲渡所得」について説明します。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得の計算方法は、単純に売却金額から購入時の金額を差し引くワケでありません。そこに、減価償却費(詳細は後述します)や売却・購入時の諸費用を加味する必要があるのです。計算式にすると以下のような式になります。
「(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時の物件価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用)」
売却にかかった諸費用については、売却金額から差し引きます。購入時の諸費用については、購入時に費やした金額として購入時の物件価格に上乗せします。また、そこから減価償却費を差し引いて計算します。
減価償却費とは何か?
あまり馴染みがない減価償却費について説明します。減価償却費とは、簡単に言うと不動産が劣化した分の費用です。不動産(土地以外)は経年劣化していきます。そのため、10年前は3,000万円で買ったマンションも10年後の今は、10年間の劣化している分の価値がマイナスされています。
そのマイナスされている価値を金額として差し引く事を減価償却費と言います。減価償却費の計算方法は決まっていて、築年数に応じて「償却率※1」という固定された数字を掛けます。この償却率は不動産の種類ごとで異なってきますので、詳細は償却率の一覧をご覧ください。一般的な木造一戸建てと鉄筋コンクリート造のマンションは以下のような償却率になります。
- 木造一戸建て 0.046
- 鉄筋コンクリートマンション 0.022
減価償却費の事例
例えば3,000万円で購入した鉄筋コンクリート造のマンションは以下のような計算式で減価償却費は算出します。
「3,000万円×償却率0.022=66万円」
この66万円という金額が、この物件が1年間に償却(価値が目減りする)する金額になります。そのため、築10年だと660万円の価値が目減り(66万円×10年)したという事になります。この金額を購入時の金額に経費のようなイメージでマイナスします。
譲渡所得の計算事例
減価償却費が分かった所で、実際に以下のような物件の譲渡所得を計算してみましょう。
- 先日5,000万円で鉄筋コンクリート造のマンションを売却した
- 売却時には180万円の諸費用がかかった
- このマンションは10年前に新築として4,000万円で購入した
- 購入時には150万円の諸費用がかかった
これを先ほど言った譲渡所得の計算式に当てはめると以下のようになります。
「(5,000万円-180万円)-(4,000万円+150万円-880万円)」
そのため、この物件の譲渡所得は1,550万円となります。
※1償却率
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070914/pdf/06.pdf
節税①譲渡所得税について知ろう
譲渡所得の計算方法が分かった所で、次は実際にその譲渡所得に対してどのくらいの税金が掛かってくるかという話です。譲渡所得税は保有期間によって税率が異なります。そのため、税率が安くなる「5年」という保有期間を境に節税効果が生まれるのです。
長期保有の場合
物件を売却した年の1月1日時点で、その物件の保有期間が5年を超える場合には「長期保有」の扱いになります。この時点で譲渡所得税率は低くなります。税率は以下の通りです。
- 所得税:15%(復興特別所得税2.1%)
- 住民税:5%
例えば、譲渡所得が2,000万円であったと仮定します。その時には以下のような計算になります。
つまり、譲渡所得2,000万円の長期保有物件の場合には、譲渡所得税は406.3万円になります。
短期保有の場合
物件を売却した年の1月1日時点で、その物件の保有期間が5年以下の場合には「短期保有」の扱いになります。短期保有の場合には前項でお話した長期保有の場合よりも税率は高くなります。税率は以下の通りです。
- 所得税:30%(復興特別所得税2.1%)
- 住民税:9%
例えば、前項の長期保有の時と同じく、譲渡所得が2,000万円であったと仮定します。その時には以下のような計算になります。
つまり、譲渡所得2,000万円の長期保有物件の場合には、譲渡所得税は792.6万円になります。
上記のように物件の保有期間が5年を超えるか超えないかで、譲渡所得税率は大きく異なります。譲渡所得が2,000万円であれば386.3万円もの違いが出てくるのです。そのため、例えば5年を超える間近の物件であれば、売却時期を少し遅らせて長期保有の物件にした方が節税出来る時もあります。
節税②「3,000万円の特別控除」について
つづいて「3,000万円の特別控除」についてのお話です。譲渡所得においては、この特別控除が最大の節税効果があります。この特別控除の内容を簡単に言うと、「ある条件をクリアすれば譲渡所得を3,000万円控除する」という事です。
これを言い換えると、「3,000万円を超える譲渡所得が発生しない限りは、譲渡所得税も発生しない」という事になります。仮に、譲渡所得が5,000万円ある時には「5,000万円-3,000万円」で2,000万円が譲渡所得という扱いになります。
特別控除を受ける条件
ただし、特別控除を受けるためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。条件が多く且つ複雑なので詳細は国税庁ホームページ※2を確認頂きたいのですが、主要な点のみ以下に要約します。
尚、以下の要約に「住まなくなった日から3年目の12月31日までに」という文言が出てきますので、前もってこの文章の意味を解説しておきます。この文章の意味は、例えば2016年4月に住まなくなった(住民票を移した)とします。そうすると2019年12月31までが、この期間に該当するという意味です。
- 自分の自宅を売却するか、自分が権利を有している借地権を売却する
- 住まなくなった日から3年目の12月31日までに売る
- 仮に家を解体して取り壊している場合には、「取り壊した1年以内の売却」、「売却するまでに貸駐車場などの、他の用途で利用していない」という2つの条件が加わる
- 売却した年の過去2年間に、住宅売却に対する特例(この特別控除含む)を受けていない
- 親子や夫婦など特別な関係がある人への売却ではない
主にはこのような条件があります。基本的には、「居住用の家」を「第三者に売却」した時に適用できる特別控除です。注意するべき点は、「昔住んでいたが今は住んでいない」という時や、「直近で何か特例を受けた」または、「年間の半分くらいを過ごす別宅を売却する」などの時です。
こういう時は、税務署の判断によっては上記の条件から外れる可能性があります。そのため、このような不動産を売却する時には国税庁ホームページでしっかり確認の上、それでも不明点があれば最寄りの税務署に確認してみましょう。
※2国税庁 マイホームを売った時の特例
https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm
特別控除を受けられない時はどういう時?
前項の特別控除が受けられない時で、良く例に挙げられるのは以下のような状況の時です。
- ①この特例を受けるためだけに入居する
- ②仮住まいなど一時的な入居である
上記①②の時には、この特別控除が受けられない可能性が高いです。基本的には投資用物件は特別控除の対象ではないので、この特別控除を受けるためだけに入居する①のような事例は、税務署の判断で特別控除対象外になることがあります。
税務署がどのように判断するかと言うと、基本的には住民票の移動履歴や売買契約書などの公的書類で判断します。とは言え、明確な決まりがあるワケではないので、少しでも特別控除の対象外になる可能性があれば、前項と同様に最寄りの税務署に確認しましょう。
節税③諸費用を知る事
最後の節税項目については、諸費用をキチンと把握しておく事です。「譲渡所得について」の項目でお話した通り、譲渡所得の計算式は「(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時の物件価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用)」になります。
つまり、売却時の諸費用をキチンと把握しておく事で、譲渡所得を低く抑えられるのです、譲渡所得を低く抑えられるという事は、自ずと譲渡所得税を低く出来るという事になります。売却時に計上できる諸費用は以下の通りです。
- ①不動産会社に支払う仲介手数料
- ②登記関係費用(抵当権抹消登記、司法書士報酬料)
①仲介手数料と②登記関係費用について
上記①の仲介手数料はイメージしやすいと思います。不動産会社に支払う、「物件価格×3%+6万円(物件価格が税抜き400万円以上の場合)」の仲介手数料の事です。また、登記関係費用は、抵当権抹消費用と司法書士に支払う報酬です。
抵当権抹消登記は住宅ローンの残債がある方のみに発生しますので、住宅ローンの残債が無い方や、そもそも現金で購入した方は登記関係費用自体発生しません。抵当権抹消登記は基本的には司法書士が行いますので、その司法書士にお礼として支払う報酬も登記関係費用の中に含まれます。相場としては5万円前後になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。このように、儲かれば儲かるほど譲渡所得税は高くなります。元々税率が高い税金なので、キチンと節税を行わないと100万円単位で税金が掛かる場合もあります。また、3,000万円の特別控除を受ける場合にも確定申告が必要と言う点は認識しておきましょう。
家を売却すると税務署からハガキが届きます。そのハガキに従って、確定申告が必要かを判断するのですが、もし必要な場合は税務署のホームページ※3をご覧ください。このホームページに沿って入力していけば確定申告書類は作り易いです。
※3確定申告書 作成ページ
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/kakutei.htm
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