中古マンションを売買する時には、リノベーションをして売買する方法もあります。自分のマンションをそのまま売った方が良いのか、リノベーションした方が良いのかは物件にもよりますし、売主の事情でも左右されます。特に、築年数や不動産市況によっても左右される事ですので、一概には言えません。
また、購入者の立場からも同じように築年数や不動産市況によってリノベーション物件を購入した方が良いかは左右されます。賃貸という選択肢もある中で、リノベーション物件についてはどのように考えれば良いでしょうか。
今回は、そんなリノベーション物件をテーマにお話します。
リノベーションについて
リノベーションという言葉は5~6年ほど前から流行り出した言葉です。ちょうどその頃はリノベーションの他に「シェアハウス」という言葉も流行っていた時期で、新しい不動産の形式が流行っていた時期でもあります。
リノベーションとリフォームの違い
リノべーションを語る上で良く質問に挙がるのが、リフォームとの違いです。リノベーションとリフォームについて厳密に定義付けられているワケではありませんが、基本的にはこの2つは別物になります。
リフォームとは
リフォームは、マイナス(劣化)の状態をゼロ(新築時)に戻すようなイメージです。つまり、グレードアップさせるのではなく、原状回復に近い工事になります。クロスやフローリング、水周りなど、特に目に見える部分はどうしても劣化していってしまいます。そのため、クロスやフローリングの張替などを行い、新築時の状態に戻す事をリフォームと言います。
リノベーションとは
リノベーションは、リフォームと違いマイナス(劣化)をプラスにする事を言います。つまり、新築時に戻すだけではなく、そこからグレードアップさせるのです。そのため、工事の規模がリフォームに比べると大規模になり、コストもリフォームより掛かるケースが多いです。例えば、壁一面を耐久性のある壁に変えたり、使い易いように間取りを変更したりする工事です。
リノベーション事例
中々リノベーションと聞いてもピンと来ない方もいると思うので、いくつか事例を紹介します。勿論、リノベーション費用は会社によっても異なるのであくまで参考として見てください。
- 90㎡の床面を全て天然素材のクッションフロアに変更
工期:2か月 費用:750万円 - 水周りを全て最新式の設備に入れ替え
工期:1.5か月 費用:350万円 - 壁面を全て取り払い広々としたリビングにステンドグラスを催したガラスを配置
工期:2.5か月 費用:840万円 - 子供部屋をリビングから見えるようにするために壁を取り払い、将来のためにクロゼットは可動式に変更
工期:2.5か月 費用:570万円
これはリノベーション会社が実際に行ったリノベーションの事例の一部です。リノベーションは前項で言ったように、リフォームとは違い何かプラスアルファの要素があります。だからこそ、リノベーションをすると資産価値が上がり、価格が高くなりやすいのです。
リノベーション物件の価格相場と築年数の関係
結論から言うと、リノベーション物件の価格相場と築年数は、あまりにパターンが多すぎるので、一概に言う事は不可能です。例えば、リノベーションにどのくらいの金額を掛けたかは、そもそも依頼する会社によっても違います。そのため、同じリノベーションをした物件でも、A社に依頼したら600万円で、B社に依頼したら800万円等という事もザラにあるのです。
しかし、一概には言えないとはいえ、売主側も買主側も注意するべきは、一般的に中古マンションの価格相場が下がると言われている「節目」の築年数についてです。
築年数による中古マンションの下落率について
中古マンションは、築年数に応じて以下のような下落率になります。
こちらのグラフは、1㎡あたりの単価の推移を築年数ごとに表しているグラフです。このグラフから、築10年~20年の間でガクっとマンション価格が下落しているのが分かると思います。これは、中古マンションの購入検討者が築10年を一旦の節目として見ているという事を表しています。
また、この下落率をまとめると以下のようになります。
- 築0~5年 →築6~10年:㎡単価54.19万円→50.93万円(約6.1%下落)
- 築6~10年 →築11~15年:㎡単価50.93万円→43.44万円(約14.8%下落)
- 築11~15年→築16~20年:㎡単価43.44万円→29.86万円(約31.3%下落)
- 築16~20年→築21~25年:㎡単価29.86万円→26.81万円(約10.3%下落)
売主も買主も「節目」が狙い目
売主の立場からすると、31.3%も下落する築11年目が狙い目のポイントになります。何もせずに築11年目を迎えてしまうと、そこから5年間で急激にマンション価格が下がってしまう危険性があるからです。
そのため、築11年目を迎えてしまった中古マンションは、リノベーションして資産価値を向上させてから売却した方が良いケースもあります。いずれにしろ、最初に通常の(リノベーションしない)査定額を算出してからリノベーションをするかどうかは判断した方が良いです。
また、買主もこの節目を意識すると良いです。例えば、築20年を過ぎる物件については、既に大きく下落した後の物件です。その時に売主はリノベーション済み物件であるとして、高く売り出す可能性があります。
その時に、リノベーションしてある状態の部屋が気に入れば良いですが、気に入らなければ一度考え直しましょう。なぜなら、そもそもリノベーションしていない物件を安く買って、自分好みにリノベーションをするという方法もあるからです。
売却と賃貸どちらが良いか?
結論を言うと、リノベーションをしていてもしていなくても、この「購入VS賃貸」に対する答えは同じです。売却と賃貸のどちらが良いかは、その方が物件の売却を「どうしたいか」によって変わってきます。
手持ち資金は絶対に捻出したくないケース
マンションの売却に伴って手持ち資金は絶対に捻出したくない場合には、賃貸も視野に入れなければいけません。「売却金額>ローン残債+売却に関する諸費用」の状態にならない限りは、確実に手持ち資金の捻出は必要になるからです。
しかし、どうしても賃貸が嫌な場合には、リノベーション後の売却も考えられます。そうすれば「売却価格」が上がりますので、もしかしたら「ローン残債+売却に関する諸費用」よりも高く売れるかもしれません。
とにかく利益が出る方を選択したいというケース
利益を最優先に考える場合には、売却時と賃貸時の両方のケースで査定額を算出しましょう。その上で、売却時にかかる諸費用、賃貸時にかかる諸費用及ランニングコストを加味した上でどちらの方が、利益が出るかを考えます。
また、例えば「エリア的には人気があるけれども、あまりに部屋が劣化している」などの場合は、リノベーションしてから売却、若しくは賃貸した方が良いです。
まとめ
リノベーションは、今やそれほど特殊で珍しい手法ではありません。不動産会社の方も購入検討者にリノベーション物件を薦める場合もありますし、購入してからのリノベーションを勧める場合もあります。勿論、売主も同様に、そのまま売るのではなくリノベーションしてから売却したり賃貸したりという選択肢もあります。
ただ、リノベーションを行っていない不動産会社もまだまだ多いので、不動産会社の中には選択肢としてリノベーションがない場合もあります。そのため、リノベーションも視野に入れる場合はリノベーションを行っている不動産会社に仲介を依頼しましょう。
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