土地や一戸建て、マンションなどの不動産は住宅ローンと密接な関係があります。物件の予算を決める時には、住宅ローンをいくら組めるかという点は非常に重要になってきます。しかし、住宅ローンを組む時に考えるべきは、住宅ローンをいくら「組めるか」ではなく、いくら「組むべきか」という考え方です。
いくら「組むべきか」を考えないと、自分の生活を圧迫してまで住宅ローンを組むことになってしまう可能性もあります。そうなると、新しい住宅を買って「豊かな生活」を送るはずが、「返済が苦しい」という本末転倒な状態になってしまいます。
そこで、今回は住宅ローンの借入額についてのお話をします。
マンションの購入方法
マンションなどの不動産は1,000万円単位の商品のため、住宅ローンを組んで購入する人が多いです。そのため、基本的には「捻出できる自己資金+借入金」という構成で不動産を購入します。その時に注意するべき点は、どのくらいの金額を自己資金にして、どのくらいの金額を住宅ローンで賄うかです。
「返済地獄」という言葉があるくらい、住宅ローンを自分の支払い能力ギリギリで組んでしまうと、日々の生活が圧迫されてしまいます。住宅ローンを組む時に注意しなければいけない点は以下です。
- 自己資金は全て捻出せずに余裕資金を残しておく
- 住宅ローンを組む時には限界ギリギリで組まない
- 今後の経済情勢を考える
上記3点を意識しながら住宅ローンを組みましょう。
住宅ローンの審査基準について
住宅ローンを組む上でまず大事な事は、住宅ローンを融資するかどうかを判断する金融機関の審査基準を知っておく事です。この基準を知っておけば、「金融機関の審査に通る=自分が支払える金額である」というワケではない事が分かります。
金融機関の審査基準
金融機関によっても多少異なりますが、金融機関が審査する項目は以下です。
- ①本人プロフィール(年齢など)
- ②勤務先プロフィール(会社規模、役職、職種、勤務形態、勤続年数など)
- ③延滞履歴(過去の借入で延滞歴はないか?)
- ④他の借入(車のローンなどの他の借入はないか?)
- ⑤本人の年収から計算する返済比率
上記①②は、本人のプロフィールや勤務先のプロフィールによって、「継続的に安定した収入を得られるか」を審査します。そのため、例えば年齢が定年間近だと「安定した収入」の面で厳しいと見られますし、勤続年数が短くても「安定した収入」ではないと審査されます。
また、③の延滞履歴は信用性をジャッジします。金融機関は返済の延滞を最も嫌がりますので、延滞履歴がある時点で、審査は非承認になることがほとんどです。また、④の他の借入があれば、その月々返済も加味されて審査されます。
そして、一番大事な点が⑤の年収から計算する返済比率になります。この返済比率をキチンと考えてローンを組まないと、先ほど言った「返済地獄」の状況に陥ります。
返済比率とは?
返済比率とは、年間の収入と年間の返済額の割合の事です。例えば年間収入が500万円で、年間返済が100万円の場合は「100万円÷500万円」で、返済比率20%となります。本人の年収にもよりますが、多くの金融機関が返済比率35%までが審査の上限になり、金融機関によっては40%と設定する場合もあります。
ただし、返済比率には以下の注意点があります。
- ①金融機関が審査する時には金利を上げて計算(変動金利なら3%前後)
- ②年収は額面の金額であり、手取り金額ではない
- ③返済比率に収まっているからと言って審査に通るワケではない
上記①のように実際の金利ではなく、金利が上がった事を想定して高い金利で審査をします。現在変動金利は最も低くて0.5%程度ですが、審査する際には3%前後の数字になります。但し、返済比率を計算する時の年収は、いわゆる額面金額であり実際の手取り収入ではありません。また、金融機関が定めている返済比率に収まっているからといって、必ず審査に通るワケではありません。
返済比率の計算例
それでは、実際に金融機関が計算している返済比率を見てみましょう。以下のような条件で返済比率を計算します。
- 実質金利は変動金利の0.7%
- 審査金利3%で計算
- 年収は額面で500万円
- 借入額は3,700万円
- マンションの管理費・修繕費は月々15,000円
- 金融機関の返済比率の条件は35%以下
上記の条件で返済額を計算する(審査金利)と、月々142,394円・年間1,708,728円となります。年収500万円から逆算すると返済比率34.1%となるので、金融機関の設定する返済比率には収まっています。つまり、年収500万円の方は3,700万円の借入は可能という事です。
そして、3,700万円を実質金利の0.7%で借り入れると、月々99,352円・年間1,192,224円の支払いになります。また、実際には、この金額に管理費・修繕費の月々15,000が加算されますので、月々114,352円・年間1,372,224円の支払いが発生します。
更に、額面の年収500万円という事は、手取り収入は400万円程度ですので(家族数などによって変動します)この方が実際に得る収入と実際に支払う支出の返済比率を割り出すと「1,372,224円÷4,000,000円=34.3%」となります。
つまり、毎月会社から実際に入金されている給料の35%近くが住宅費用に消えているという事です。当然、食費や生活費なども掛かってきますので、給料の35%近くが住宅費として消えてしまうと、生活は厳しくなります。
そのため、銀行の審査がクリア出来た事が、「この金額のマンションが買える」と言う事ではないのです。
借入額の目安とは?
前項までの話しの通り、金融機関の審査基準を軸に借入額を決めてはいけません。そもそも、金融機関の審査はマンション居住時に掛かるランニングコスト(管理費・修繕費)が加味されていませんし、収入も額面金額です。
そのため、借入額の目安は金融機関の審査とは別に自分自身で定めなくてはいけません。この時に定める数字は、借入者本人が「どの程度を住宅に費やしたいか」や「今後の収入の伸び」「家族構成をどうしたいか」などによります。
ただ、目安としては以下のような数字になります。
- ①年間返済額は年収の25%以下
- ②借入金額は物件価格の80%以下
前項ではマンションのランニングコストと、実質のローン支払い額、更に手取り収入を加味した上で返済比率を計算しました。それらを総合して考える、上記①のように年間返済額は年収の25%に抑えた方が良いです。これは、実質金利ではなく金融機関の「審査金利」で計算した時の話です。
つまり、多くの金融機関が設定している35%の数字を10%下回った返済比率で考えるのが妥当という事です。返済比率を25%以下にすれば、前項で計算した「実質の支払額÷手取り収入」の計算でも20~25%程度に収まります。
また、上記②のように借入金額物件価格の80%以下に設定しましょう。つまり、20%は自己資金から捻出するという事です。これは20%程度の資金が貯まっているようなキャッシュフローでないと、万が一金利が上がった時などに対応出来ないからです。
まとめ
このように住宅ローンを組む時には、金融機関の基準に従っていてはいけません。金融機関の基準は、「この基準をクリアすれば返済が滞るリスクは低いだろう」という考え方です。しかし、本当に考えなくてはいけない基準は「豊かな生活が送れるか」という基準です。
そのためには、金融機関の基準は一度忘れて、自分なりの基準を作る必要があります。その基準の目安が上述した数字になります。
※2016年8月執筆。記載の金利などは当時の数字です。
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