世の中には「敷金・礼金泥棒物件」というものがあります。もちろん、世の中に出回っている物件の中では少ない方ですが、このような悪質な物件に当たってしまったら、費用が無駄にかかってしまうのです。今回は、そんな「敷金・礼金物件」の概要や対策などを解説していきます。
敷金・礼金泥棒物件とは?
敷金・礼金泥棒物件とは、賃貸オーナーが賃借人からもらう「敷金・礼金」目当てに、賃貸借契約を結ぶことです。つまり、賃借人側からすると、賃貸借契約を結んだものの何かしらの事情で早く退去することになるため、初期費用として支払った敷金・礼金が無駄になるということです。
そんな敷金・礼金泥棒物件については、以下の点を理解しておきましょう。
- オーナーの手口とは?
- 敷金と礼金について
一言でいうと、敷金・礼金泥棒物件は非常に悪質な物件になるので、賃借人は十分注意しなければいけません。
オーナーの手口とは?
礼金泥棒の手口は以下の流れです。
- 相場より安い賃料で貸し出す
- わざと劣化しているモノを置いておく
- 嫌がらせをして退去を促す
まずは、安い賃料で貸し出しをすることで、賃借人が早く付くようにします。その際、室内に劣化したカーテンやカーペットなどを置いておき、賃借人が入居後破棄するようにしておきます。詳細は後述しますが、こうすることで「原状回復費用」を賃借人から徴収できるのです。
そして、入居後に賃借人へ嫌がらせをすること、賃借人が自主的に引越しをするように促すという流れです。たとえば、帰宅した瞬間に無言電話をかけてストーカーを装ったり、郵便物を抜き取って細工をしたりと、オーナーなら色々なことができます。
敷金と礼金について
ここで、敷金と礼金の仕組みを知っておきましょう。敷金・礼金はどちらも家賃1か月ほどに設定している物件が多いです。敷金・礼金がゼロの物件もありますが、敷金・礼金泥棒物件は当然ながらゼロにはしません。また、敷金・礼金は根本的に異なるので、きちんと違いを理解しておきましょう。
敷金とは?
敷金とは、オーナーが賃借人から預かるお金であり、退去時に賃借人の責任による損傷の補修費に充てるお金です。ほかにも、賃借人が家賃を滞納したときに充てることもできます。つまり、オーナーはあくまで敷金を「預かっている」のであって、「もらっている」わけではないということです。
しかし、賃借人が室内のカーテンやカーペットなどを破棄してしまうと、オーナーは「原状復帰が不可能」という点を主張できます。そのため、最低でもカーテンやカーペットの購入費用などは、敷金から徴収することが可能なのです。
敷金・礼金泥棒物件は、このように「原状回復費用」として、賃借人から敷金まで徴収するような仕組みになっています。
礼金とは?
また、礼金は初期費用としてオーナーが「もらう」お金なので、退去したからといって返還されません。オーナーからすると、どんどん入居者が替わっていく方が、敷金・礼金をたくさん徴収できるのです。
たとえば、家賃相場10万円のエリアで「家賃8万円、敷金8万円、礼金8万円」にしていたとします。この場合、相場の10万円で貸しているときよりも月々2万円損しているので、仮に2か月で退去させたら4万円損をしています。
しかし、もし2か月で退去させてすぐに新しい入居を住まわせれば、年に6組の賃借人を付けることができます。その場合、「家賃8万円×12カ月+敷金8万円×6組+礼金8万円×6組」と、最大で192万円の収益になるのです。
これを家賃10万円で賃貸に出すと、年間120万円になるので敷金・礼金泥棒物件はどれだけ得できるか分かると思います。もちろん、このケースは敷金・礼金泥棒物件として非常に上手くいっているケースですが、それでも大きな収益になるという点は分かると思います。
敷金・礼金泥棒物件への対策
さて、このような悪質な物件に引っかからないためには、以下が有効な対策です。
- 家賃相場が安い物件は理由を聞く
- オーナーが上階に住んでいる物件は注意
- 室内の付属品は入居までに破棄させる
敷金・礼金泥棒物件に住むと、初期費用は無駄ですし、引っ越しの手間などもかかってきます。しかし、残念ながらこのような物件は世の中には少なからず存在するので、良く注意して物件選びをしましょう。
ただし、前もって一点言っておきますが、「上記のような物件=敷金・礼金泥棒物件」というわけではありません。もちろん、上記のような物件でも普通の優良物件はたくさんあります。あくまで、上記のような物件は敷金・礼金泥棒物件の可能性がゼロではないので注意しておくべきと認識ください。
家賃相場が安い物件は理由を聞く
まず、家賃が相場より安い物件は、その理由を聞くようにしましょう。敷金・礼金泥棒物件は回転率が重要なので、家賃相場を下げて賃借人を早く付ける必要があります。賃借人が早いタイミングで退去しても、新しい賃借人を早く付けないと、オーナーは収益を上げられないからです。
そのため、家賃が安い物件はその理由を聞き、理由が明確でない場合は敷金・礼金泥棒物件の可能性もあります。
オーナーが上階に住んでいる物件は注意
また、オーナーが賃借人に嫌がらせをするとしたら、同じ建物内にいる方がやりやすいです。たとえば、上述した「帰宅と同時に無言電話」などは、帰宅するタイミングが分からないとできません。ほかにも、同じ建物内であれば、郵便受けやバルコニーに嫌がらせすることも可能です。
もちろん、上階に住んでいないからといって絶対に敷金・礼金泥棒物件でないとは限りませんが、同じ建物にオーナーが住んでいる方が確率的には高いでしょう。
室内の付属品は入居までに破棄させる
さらに、室内に劣化した付属品がある場合は、入居までに破棄してもらうようにしましょう。先ほどいったように、賃借人が勝手に破棄すると敷金から差し引かれます。しかし、オーナーに破棄してもらえれば、賃借人が故意・過失でない限り、退去時に補修費用を支払う義務はないのです。
たとえば、日焼け後や冷蔵庫の裏の黒ずみなども、経年劣化として処理されます。つまり、大抵の場合は特約がない限り、賃借人が負担するケースはないのです。そのため、賃貸借契約を結ぶときに相談をして、必ず入居前に破棄してもらうようにしましょう。
まとめ
このように、敷金・礼金泥棒物件という存在をまずは認識しておきましょう。その後、概要を知り、対策を知ることです。賃貸物件選びの際には、敷金・礼金泥棒物件のことも念頭に置き、怪しいと思ったら対策を思い出して物件選びをしましょう。
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