投資用マンションの売却時には、気を付けなければいけない点が多々あります。そもそも居住用マンションと比較すると、「毎月の利益がある」という点から違います。また、国が定める不動産売却時の税制優遇は、基本的には投資用不動産ではなく「居住用」不動産を基準に考えています。
そこで今回は、投資用不動産の売却時に気を付けるべき点をお話します。
投資用マンションのうまい売却方法
投資用マンションは居住用売却と違い、その物件から毎月収益が上がっています。そのため、その物件からの毎月の収益を加味して「いつ売るべきか?」は考えなくてはいけません。
結論から言うと、投資用マンションをうまく売却する際に大事な事は「キャッシュフローを考える事」です。このキャッシュフローをキチンと考えて、投資用マンションの売却益を計算しなければいけません。
今回は以下の物件を例に挙げ、今売却するのと5年後売却するのとでは、どちらがお得かを計算します。
- 投資用マンションで年間の純利益(税・諸費用差引後)は100万円
- 今すぐにこのマンションを売却すれば5,000万円で売却できると仮定(残債4,000万円)
- 5年後にこのマンションを売れば4,500万円で売却できると仮定(残債3,700万円)
- いずれも売却時の諸費用は180万円で計算
今すぐに売却する場合
まず、今すぐに売却する場合に得る事ができる利益を計算してみます。計算式は以下になります。尚、税金関係は加味しない前提です。
「売却益5,000万円-(残債4,000万円+諸費用180万円)」となり、利益は820万円です。
今すぐに売却すれば、今後月々の収入が途絶えるものの、5年後より売却できる金額が高い点が利点になります。
5年後に売却する場合
次に5年後に売却した場合の利益を見ていきましょう。5年後に売却した時の利益は以下の計算式になります。こちらも前項同様、税金関係は加味していません。
「(売却益4,500万円+年間純利益100万円×5年)-(残債3,700万円+諸費用180万円)」となり、1,120万円となります。
前項との決定的な違いは「年間純利益」と「残債の減少」になります。実は単純な話ではありますが、この2つの点は意外と見落としがちな点でもあります。このケースでは、年間純利益を5年間得られている点と、残債が減っている分を加味すると、5年後に売却する方が300万円利益は多いです。
ただし、5年後に4,500万円で売却出来るという点と、年間純利益を100万円出し続けられるという前提での話になります。不動産市況が下がったり空室が続いたりすると、売却金額と年間純利益が減少するので、上述した利益からは変動します。
消費税について
不動産を売却する時には消費税に気を付けなくてはいけません。何故なら、不動産の種類と売主の種類によって、課税・非課税のルールが変わるからです。
不動産の種類による課税・非課税ルール
まず、不動産の種類による課税・非課税のルールからお話します。
- 土地の売却:非課税
- 建物の売却:課税
上記の通り、土地は非課税で建物は課税というルールになっています。土地が非課税である理由は、消費されるモノではなく、資本移転の一種という考えからであるからです。
売主の種類による課税・非課税ルール
結論から言うと、土地の時は売主が誰であれ非課税です。しかし、建物は売主が「個人」である場合には非課税になり、売主が「事業者」の場合はルール通り課税対象となります。更に複雑なのが、その建物の売買が「投資用」である場合には、売主が個人であろうと課税になります。
まとめると以下のようになります。
投資用 居住用/売主:個人 居住用/売主:事業主
土地 非課税 非課税 非課税
建物 課税 非課税 課税
諸費用についての諸費税
また、売却時の価格だけでなく、売却に伴い掛かってくる諸費用についても消費税を加味して考える必要があります。
仲介手数料
仲介手数料は消費税が掛かりますし、仲介手数料を計算する時の物件価格は税抜き価格を基準にします。例えば、税抜き売却価格5,000万円のマンションの仲介手数料を計算してみましょう。計算式は以下の通りです。
「(税抜き売却価格5,000万円×3%+6万円)×消費税1.08」となり、1,684,800円が仲介手数料になります。
※税抜き売却価格が400万円以上の仲介手数料率は「3%+6万円」です。
その他消費税が掛かる諸費用
仲介手数料以外にも消費税がかかる諸費用があります。
- 金融機関に支払う「一括繰上げ返済手数料」
- 司法書士への報酬
投資用マンションを売却する前に繰り上げ返済をする場合には、その手数料に消費税が掛かってきます。また、抵当権抹消登記などの登記関係費用でも、司法書士報酬料には消費税が加味されますので注意しましょう。
3,000万円の特別控除について
不動産を売却する上で、最大の節税が「3,000万円の特別控除」になります。簡単に言うと、売却時に発生した利益(譲渡所得)を3,000万円まで控除するという特別控除になります。つまり、売却した時に利益が3,000万円以下であれば税金は掛からないという事です。
居住用の不動産を売却する時には、中々3,000万円の利益が出る事はありませんが、一棟のマンションやアパートなど、規模の大きい不動産を売却する時には3,000万円以上の利益が出る事も少なくありません。
投資用不動産は3,000万円の特別控除を受けられない
原則、投資用不動産は3,000万円の特別控除を受ける事が出来ません。なぜなら、3,000万円の特別控除を受けられる不動産は「居住用」だからです。実際に国税庁ホームページ※1には3,000万円の特別控除を受けられる条件として以下の記載があります。
- 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
- 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
- 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の2つの要件全てに当てはまることが必要です。
1.その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
2.家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
上記は、3,000万円の特別控除を受ける適用要件の一部です。つまり、「自分が住んでいる家屋」を売る事が原則と言う事です。また、居住用であった建物を取り壊しても、その土地を投資用(貸駐駐車場など)として使用すれば、適用要件からは外れます。当然、居住用であった土地に投資用マンションを建築すれば、適用要件からは外れます。
居住用不動産を売却した方は、この「3,000万円の特別控除」を知っている方も多いです。だからこそ投資用不動産でも適用できると思っている方もいますが、投資用は適用外なので認識しておきましょう。
※1国税庁ホームページ マイホーム売却の特例
https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm
まとめ
投資用不動産を売却する時には、一旦居住用不動産の売却とは「別物」と思わなければいけません。投資用不動産は収益がある分、売却時の利益の計算方法が違います。また、投資用不動産は消費税のルールも節税のルールも異なるからです。
これらを居住用と同様に考えてしまうと、予想外の税金が徴収されたり、売却によって本来得られる利益を圧迫してしまったりする可能性があります。投資用不動産を売却する時には、上述した点をしっかり理解してから売却しましょう。
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