立地適正化計画とは?策定の体制や補助金・スケジュール、実際に日本で計画が進んでいる都市は?

「立地適正化計画」という言葉を聞いた事があるでしょうか。時代は移り変わり、人口推移や不動産の老朽化により、街並みは変わっていきます。言い換えると、「どういう街づくりをするか」という点については、時代に合わせて変えていかなくてはいけないのです。
今回はそんな街づくりに関して、「立地適正化計画」をテーマにお話していきます。

目次

立地適正化計画とは?

日本のまちづくりは少子高齢化を背景に、高齢者や子育て世代に優しい生活を実現することを軸としています。このような背景の中で、医療・福祉施設や商業施設や住居などが、エリア的に密接している事が大事になります。

そのような街であれば、高齢者や子育て世代をはじめとする住民が生活利便施設にアクセスしやすいからです。これらを「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」の考えと呼び、一連の計画を「立地適正化計画」と言います。

簡単に言うと、「時代によって日本の人口構成や施設の種類なども変わったので、時代に合わせた街づくりをしましょう」という事です。

立地適正化計画の指針

細かい街づくり案に関しては、各市町村によって異なります。もともと各自治体には独自に作成したマスタープランがあり、そのマスタープランに沿って街づくりは進められていました。そのマスタープランを今回の立地適正化計画によって修正するので、以下のような指針があります。

  • ①全体的なマスタープランであること
  • ②計画と公共交通は一体化する
  • ③計画の施設誘導を融合する
  • ④市区町村は主体性を持ち、広域での調整を図る
  • ⑤市街地区の空洞化を防ぐ
  • ⑥時間軸を持つ
  • ⑦公的不動産を活用する

①全体的なマスタープランであること

地区全体を見渡したマスタープランでないと意味がありません。そのため、居住金甌や医療・福祉・商業、そして公共機関など、様々な都市機能を地区全体としてどうするかを考えなければいけません。既存の市区町村が策定したマスタープランを、地区全体を考え高度化する必要があるのです。

②計画と公共交通は一体化する

居住や都市の生活を支えるためには、様々な施設へ行きやすいコンパクトな街づくりをする必要があります。そのため、地域の交通と計画は必ず密接な関係にすることになっています。

③計画の施設誘導を融合する

民間施設は当然ながら整備や維持をする必要があります。その民間施設の支援や、立地を誘導する仕組みを用意し、インフラの整備及び利用規制などを整えなければいけません。つまり、立地適正化計画と施設誘導は融合して考える必要があるという事です。

④市区町村は主体性を持ち、広域での調整を図る

立地適正化計画は規模が大きいため、自分達の地区だけでは実現不可能な場合もあります。そのため、各市区町村は主体性を持ち、隣接している市区町村との協議と連携が必要になってきます。つまり、広域での調整が必須事項になるという事です。

⑤市街地区の空洞化を防ぐ

「商業だけの地区」「医療だけの地区」ではなく、各地に住民を配置する計画をしないと街の空洞化が進みます。そのため、ある程度自治体が主導となり、空洞化を防ぐ誘導も必要になります。

⑥時間軸を持つ

立地適正化計画は1~2年のスパンではなく10年単位の長期間の計画になります。そのため、都度計画状況を評価して状況にあわせて見直す必要があります。つまり、時間軸をしっかり持ち、進捗具合をキチンと確認しながら計画を進める必要があるという事です。

⑦公的不動産を活用する

財政状況や施設の老朽化などを加味した上で、公的な不動産の活用をする必要があります。スクラップ&ビルド(壊しては作る)という考えでは財政も圧迫させるので、補修やリノベーションなども加味して考えなくてはいけません。

立地適正化計画のスケジュールについて

立地適正化計画の作成は、市町村だけでなく民間事業者や住民代表者など、地域の関係者と議論を交わしながら策定します。先ほど言った「計画の達成状況を時間軸で見直すこと」は、この関係者全員で行う必要があります。立地適正化計画のスケジュールは以下のようになります。

  • ①自治体が主導して「市町村都市再生協議会」を設置する
  • ②立地適正計画を検討する
  • ③立地適正か計画の策定・公表をする
  • ④計画に沿って事業を実施
  • ⑤計画の達成状況を評価し「市町村都市再生協議会」へ報告
  • ⑥必要であれば計画の見直しを行う

一連の流れは上記の通りです。ただ、②の「立地適正化計画を検討する」と言う部分は、更に詳細な手順があるので、次項で紹介します。

立地適正計画の策定手順とは?

具体的に立地適正化計画を検討する手順は以下の通りです。

  • ①将来の人口推計、都市機能立地、居住や土地利用の現況及び交通利用状況などの調査を行う
  • ②現状の問題点・課題を整理する
  • ③まちづくりの基本的な理念や目指すべき像、そして基本方針を設定する
  • ④③に従い、具体的に何をどう事業化するかの検討をする
  • ⑤計画書の策定
  • ⑥公聴会やアンケート、ワークショップを開催して住民の意見を聞く
  • ⑦状況に応じて計画を見直す

このような手順で立地適正化計画を検討します。なるべく住民の声を取り入れつつ、未来予測をしてから街づくりの計画に着手するのです。

現在日本で計画が進んでいる都市

現在日本では、いくつかの都市が実際に立地適正化計画を進めています。詳細は国土交通省に資料※1をご覧ください。合計で、289団体の計画が進んでいます。具体的にいくつか事例を挙げると、関東では「埼玉県さいたま市・戸田市」「東京都日野市・福生市」、関西では「大阪府吹田市・高槻市」「京都府舞鶴市」などです。立地適正化計画は、関東や関西以外でも全国的に進んでいます。

※国土交通省 資料
http://www.mlit.go.jp/common/001143261.pdf

補助金や支援について

立地適正化計画は大規模な街づくりになるので費用がかかります。ただし、自治体によって財政的に多額の費用を捻出するのが難しい地域もあります。そのため、国として補助金や支援をしてくれる制度があります。

ただ、立地適正化計画に関する支援措置は多岐に渡りますので、今回はその一部だけを紹介します。支援措置の詳細を知りたい場合には、国土交通省のホームページ※2をご覧ください。

※2国土交通省 以下ホームページの「支援措置」参照
http://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/index.html

街区整備事業への補助

市街地によっては密集している地区もあります。しかし、建物が密集し過ぎていると、火災や倒壊などの大事故に繋がるリスクもあるのです。そのため、そのような密集地区には防災性能を備えた建物や公共施設を建築する必要があります。「災害」という街づくりにおいては最重要要素となる部分なので、その事業においては1/3の費用が国から支援されます。

バリアフリー環境整備促進事業

高齢者が増えていく中で、バリアフリーの環境を整えるのは必須事項と言えます。つまり、高齢者や障碍者に配慮したバリアフリーの街づくりを、国としても推進する必要があるのです。また、高齢者の社会参加を促進するための施設やインフラ整備をする必要があるため、費用がかかります。そのため、国としてもバリアフリーに関連する環境整備促進事業には1/3の費用を支援します。

このように、あくまで「立地適正化計画の目的」に沿った街づくりへの支援があります。この他には「省エネ」や「空き家」など、今の時代に合わせた課題についての事業は支援措置が用意されています。

まとめ

いかがでしょうか。立地適正化計画と聞くと小難しく聞こえますが、要は「時代に合わせて街づくり計画を見直しましょう」という事です。不動産関連である街づくりは、関係者も多く事業も大規模なので中々予定通りに進まない事も多いです。市町村では必ず「マスタープラン」と呼ばれる街づくりプランを作っているので、自分の街のマスタープランを見てみてはいかがでしょうか。

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