「駅近マンション」の価値が高いことは、誰もが想像できると思います。しかし、単純に「駅に近い」という理由だけでなく、駅近マンションは競合物件が少ないなど、価値が高い理由がいくつもあるのです。マンションを売買するときにはその点を認識しておく必要があります。
そこで今回は、駅近マンションの価値が高い本当の理由を解説します。とくに、駅近マンションを所有していて今後売却を考えている方は、駅近マンションの本当の魅力を知っておくことで、高く・早く売れる可能性が高まります。
物件選びで重視するポイントは?
まずは、そもそもマンションの購入を検討している人が、物件選びで重視するポイントはどこか?という点です。重視するポイントは人によって異なりますが、一般的には以下のような要素に分類できます。
- 予算
- エリア(最寄り駅や徒歩分数)
- 広さ
- 間取り
事実、ネットなどで物件を絞るときには、必ず上記の要素について絞り込み、物件を検索します。
そして、その要素の中でも「エリア」は非常に重要なポイントです。そのエリアの中に含まれる「駅徒歩分数」は、とくに周辺物件との差別化ポイントになるのです。
エリアが重視される理由
エリアが重要視される理由は、自分の力では変えられないからです。当然、新しい駅をつくることはできませんし、家の近くにスーパーを建築することもできません。
つまり、「エリア」は自分の力だけではどうやっても変えられないからこそ、購入時にエリアを吟味する人が多く、購入時の重要な要素になるというわけです。
また、再開発などでエリアの利便性や雰囲気が変わることはありますが、その可能性は極めて低いと言えます。
徒歩分数の重要性
エリアの中でも「徒歩分数」が重要なのは、前項の「変えられない」要素であるという点以外にも、「駅」がもっともよく使う施設だからです。
たとえば、「大型商業移設が徒歩3分」「病院をはじめとした医療施設が徒歩圏内」といっても、「駅徒歩1分!」の魅力には劣ることが多いでしょう。
なぜなら、大型商業施設はたしかに便利ですが、その施設に毎日行くわけではなく、せいぜい週末に行くくらいだからです。また、医療施設も周辺にあれば便利ですが、健康体であれば年に1回も行かないかもしれません。
一方、会社員や学生は平日ほぼ毎日駅を利用するでしょうし、休日もメインの交通手段として利用することが多いです。だからこそ、駅近マンションの価値は高いのです。
そのほかの要素は?
では、そのほかの「予算」「間取り」「広さ」の要素が重要ではないのか?と言われれば、重要ではあるもののエリアほどではないと言えます。
予算について
たとえば、「予算」はたしかに大事ですが、そもそも購入検討者が定めている予算の根拠は薄いです。
仮に、「予算は3,000万円以下」といっても大きな根拠はなく、ローンの計算をすることで予算が増えることはあります。
また、月々の支出と今後の収入をFPに相談することで、予算が増えることも多いです。
間取りや広さについて
一方、間取り・広さに関しては、たしかに家族数などを考えると、理想と大きくかけ離れていると厳しいです。
ただし、たとえば70㎡3LDK希望の人が、65㎡3LDKに変更することは、間取りによっては十分あり得ます。
また、場合によっては室内をリノベーションすることで、間取りや広さの不満を解消することができるのです。
もちろん、リノベーションは費用がかかるので簡単にできることではありません。しかし、少なくとも間取りはエリアのように、「絶対に変えられないもの」ではないということです。
徒歩分数と競合物件の考え方
さて、駅近の価値が分かったところで、徒歩分数と競合物件の考え方を解説していきます。以下の点は、とくに中古マンションを売却するときに重要になるポイントです。
- そもそも徒歩分数とは?
- 徒歩分数は、半径の「円」で考える
- 徒歩分数5分と10分の本当の違い
- 競合物件が少ないメリットは?
大事なことは、徒歩分数を直線ではなく半径の円で考えることです。円で考えることで競合物件の数がわかりやすいと言えます。
そもそも徒歩分数とは?
マンションをはじめとした不動産には、駅や施設からの徒歩分数が明記されていますが、その基準は80mで徒歩1分という基準です。徒歩分数はすべて切り上げになるので、仮に駅から85mであれば「駅徒歩2分」です。
ただし、距離を計測するときには駅からの直線距離ではなく、以下のようなルールがあります。
- 駅から実際に歩ける道を計測
- 地上駅は屋根がある地点から計測
- 地下の駅は出入口から計測
まずは、実際に歩ける道を計測するため、たとえば地図上は道であるものの、実際に歩くのは困難な道などでは計測できません。
また、地上にある駅は、改札などではなく、屋根がある地点から計測できます。つまり、改札から屋根の終わりまでの距離は徒歩分数に反映されないということです。
そして、地下の駅は出入口があれば、そこから計測することができます。そのため、出入口が複数あり、改札からの距離が遠い場合は、実際電車に乗るまでに更に分数がかかってきます。
徒歩分数は「円」で考える
さて、徒歩分数を円で考えるとは、駅を中心に徒歩分数を半径にして円を描くということです。たとえば、徒歩5分であれば、駅から半径400m(80m×5分)の円を描くと、その円に収まる物件が徒歩5分の物件というわけです。
前項のように、本来は「歩ける道」で計測するので、若干差異は生じます。しかし、あくまで駅近マンションの希少性を理解できれば良いので、ここでは駅の中心から直線で円を描いてみましょう。
徒歩分数5分と10分の本当の違い
では、実際に徒歩5分と10分で円を描き、どのくらいの違いになるのかを検証します。以下は、徒歩5分、徒歩10分で円を描いた面積です。
- 徒歩5分:400m×400m×π=16万π㎡
- 徒歩10分:800m×800m×π=64万π㎡
上記の通り、徒歩5分と10分では、面積で考えると4倍です。つまり、徒歩分数でいうと2倍なのに面積で考えると4倍になるので、単純に考えて競合物件の数も4倍になるということです。
このように、駅近マンションの魅力は利便性だけでなく、面積から考える競合物件の少なさもあります。
競合物件が少ないメリットは?
さて、競合物件が少ないことが分かったところで、実際どのようにマンション価格へ反映されるかという点です。競合物件が少ない駅近マンションの価格が上がりやすい理由は、以下の点からです。
- 希少性が高い
- 値引き交渉されにくい
上記の点は、とくにマンションを売却する人は理解しておきましょう。仮に、同じ徒歩圏内の競合物件が少ないのであれば、更に上記のメリットは大きく、強気の価格設定でも問題ないかもしれません。
希少性が高い
駅近マンションの魅力は、まずは希少性が高いという点です。駅近マンションが少ないということは、売りに出ている物件が少ないということです。とくに、ターミナル駅などの人気駅は、駅近マンションが売りに出されることは少ないです。
そのため、そのエリアで駅近マンションを探している人にとっては、多少価格が高くなっても買いたいと思うものなのです。
値引き交渉されにくい
中古マンションの売却時は、購入検討者に大体値引き交渉されます。むしろ、値引き交渉される前提で、売主側も高く売り出すことがほとんどです。
しかし、希少性の高い駅近マンションであれば値引き交渉されにくく、高い金額で売却できる可能性が高いです。
値引き交渉をするときには、「同じような物件のAが3,000万円なのでこのマンションが3,000万円であれば買う」のように、競合物件と比較されることが多いです。駅近マンションだと、比較される競合物件が少ないので、このような交渉になりにくいと言えます。
駅近の魅力とは?
ここまでで、徒歩分数は直線ではなく円で考え、駅近マンションは希少性が高く、値引き交渉されにくいというメリットがあることがわかりました。
ここでは、駅近マンションを売却するときに、さらに購入検討者を引きつける魅力を解説します。
駅近マンションの魅力は、前項で解説した「競合物件が少ないこと」や、一般的に思われがちな「駅への行き帰りが楽」という点はたしかにあります。しかし、単に「駅に近い」というだけではなく、以下の点を掘り下げておきましょう。
- アプローチについて
- 人通りの多さについて
- 信号や踏切
上記の点は、単に「駅徒歩4分!」などのアピールではなく、もっと検討者が増えるような広告にも利用できます。
アプローチについて
単に駅近といっても、駅までのアプローチ(道のり)が大事です。そのアプローチが良いか悪いかで、購入検討者へのアピールは大分変わってきます。
アプローチが良いとは、たとえば以下のようなアプローチです。
- 歩道が広い道
- 砂利道などではなく整備された道
- 信号がまったくない
- 人通りが多く夜も安全
- 歓楽街や治安の悪い場所を通らない
また、アプローチが悪いとは、上記とは逆のアプローチのことをいいます。
アプローチが良い場合
アプローチが良い場合は、広告に徒歩分数だけでなく、アプローチが良い旨も記載しましょう。
たとえば、「駅徒歩3分!信号無し!」や「駅徒歩3分!歩道が広く歩きやすい!」などの文言です。そうすれば、単に駅から近いというメリット以外も上乗せされ、更に駅近の魅力が増します。
アプローチが悪い場合
一方、アプローチが悪い場合には、以下のような対策が必要です。
- 夜は別のルートを歩く
- 歩きやすいアプローチを探しておく
要は、駅からの最短距離ではなく、別のアプローチも探しておくということです。別のアプローチも探しておけば、たとえば「夜はこちらの明るい道で・・・」「お子さんはこちらの歩きやすい道で・・・」という案内ができます。
もちろん、徒歩分数が延びれば魅力は半減しますが、上記のことを伝えないと「駅近だけどアプローチが悪いな・・・」で終わってしまいます。しかし、事前にこれらを伝えおけば、駅近に魅力を感じつつ、「時間帯などによって歩く道を変えれば良い」と思ってくれるかもしれません。
人通りの多さについて
人通りが多いアプローチは、メリットにもなりますしデメリットにもなります。メリットになるときは、夜道なども人が多く安心できるという点でしょう。そのため、とくに女性や小さいお子さんがいる家庭には、人通りの多いアプローチは好まれます。
一方、その通り沿いにマンションがある場合、自分の家の前をたくさんの人が通るというデメリットにもなりかねません。そのときは、以下のような対応をしましょう。
- 「夜道も安心」というメリットに置き換える
- 就寝時間は騒がしくないという実生活に置き換える
先ほども少し触れましたが、人通りが多いということは夜道も安心ということです。また、人通りが多いとはいえ、深夜までたくさんの人が歩いていることは少ないです。そのため、実生活で静かにしたいタイミングである就寝時間には落ち着いていることが多いといえます。
このように、駅近マンションの魅力が半減しそうな状況のときは、そのデメリットをメリットに置き換えることが大切です。営業マンにうまくセールストークしてもらったり、広告に記載したりするようにしましょう。
信号や踏切
また、アプローチに信号や踏切があるときも、駅近マンションにとってはデメリットになるでしょう。そんなときの対策は以下の点です。
- 通勤時間帯などの様子を伝える
- 信号を通らないアプローチ方法を伝える
たとえば、家の近くに踏切があったとします。誰もが踏切で待つのは嫌なものですが、踏切で待ちたくないのは、とくに朝の通勤や通学など急いでいるタイミングです。そのため、実体験をもとに朝踏切でどのくらい待つことになるのかを説明しましょう。
この点は、そこに住んでいる売主しか分からず、意外と「断続的に踏切では待つが待ち時間は数十秒程度ですぐに開く」のような状況であれば、踏切によるデメリットは軽減します。
後は、大通りをまたぐ場合など、信号待ちが長いのもデメリットになり得ます。そのようなときは、信号を通らない歩道橋などのアプローチがあれば伝えましょう。これは、上述したアプローチが悪い場合の対策と同じです。
まとめ
このように、駅近マンションの魅力は実はたくさんあり、デメリットもメリットに置き換えることができます。今回解説した点は、基本的には営業マンが行うことですが、たとえば「別のアプローチを探す」などは売主が一番良く知っているはずです。
そのため、マンションを売却するときには、営業マンに任せっぱなしにせず、売り主も最大限協力しましょう。とくに、そこに実際に住まないと分からないような魅力は、売主にしかアピールできないポイントです。
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