マンションを売却する時には、まず査定をしなければいけません。査定をして、売却できる目安の価格を決め、具体的に「売り出す」価格を決めます。その査定の方法は3種類あり、それぞれ算出方法が異なります。
自分の家はどの方法で査定されているのか?なぜその金額になるのか?このような「査定額の根拠」を知ることは、マンションをはじめ不動産の売却をする時には最も大事な事です。理由は、この「査定額の根拠」こそが不動産会社を選ぶ最も大事な要素だからです。
今回は、査定価格の算出方法についてお話します。
取引事例比較法
まずは、取引事例比較法からご紹介します。ほとんどのマンションの査定方法は、この取引事例比較法が採用されています。
取引事例比較法の概要
取引事例比較法とは、簡単に言うと、周辺で最近成約した物件を基に査定額を算出する方法です。マンションであれば、最寄り駅で成約をしたマンションをピックアップします。その中で広さや、駅距離、築年数の近い物件を更に絞り込み、大体の相場を把握します。
その相場を基に査定する物件に落とし込み、査定額を算出するという流れです。
大事なことは㎡単価で割り戻す事です。自分の売りたいマンションが50㎡であれば、「60㎡2,800万円」の事例をそのまま使ってはいけません。キチンと「46.6万円/㎡」に割り戻す必要があるのです。
どうやって直近の成約事例を知るのか?
不動産会社はREINSと呼ばれるネットワークシステムを利用できます。このREINSには、(全てではありませんが)実際に取引をした不動産の物件情報や成約情報が載っています。不動産会社はそのデータを見て、直近で成約した事例をピックアップしているのです。
REINSへは一般消費者はログインできません。しかし、最近では「REINS Market Infomation※1」というサイトで成約事例を見る事が出来ます。このサイトにはREINS程の情報量ではありませんが、それに近しい情報があります。そのため、ザックリと自分のマンションの相場を調べたい方には、このサイトの活用をおススメします。
※REINS Market Infomation
http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do
どうして不動産会社によって査定額が違うのか?
マンションの査定をしたことがある人は分かると思いますが、査定額は不動産会社によってマチマチです。しかし、大抵の会社が取引事例比較法で査定額を算出するので、参考にしている事例も同じはずです。それでも、査定額に違いがある理由は以下の通りです。
- 直近成約した実績があれば営業ノウハウがあるので、査定額が高くても売りやすい
- エリア的に得意なエリアであれば、顧客を抱えている可能性が高い
- 眺望や騒音など、減点ポイントが不動産会社によって違う
このような理由により不動産会社によって査定額にバラつきがあるのです。不動産会社が得意なエリアかどうか、担当者の感覚値で減点ポイントがどの程度か(例えば眺望阻害や騒音の感じ方)などが、それぞれ違うという点が最大の理由です。
原価法
つづいて、原価法についてです。この査定方法は、主に一戸建ての建物部分を査定する時に利用されることが多いです。
原価法の概要
原価法とは、売却しよう思っている物件を、「改めて新築で建てた場合の金額を割り出し、そこから経年劣化している分を差し引く」という査定方法です。計算式としては以下の通りとなります。
「再調整価格×((耐用年数-経過年数)÷耐用年数)」
<用語の説明>
- 再調整価格※2・・・改めて新築を建てた時の建築費
- 耐用年数・・・造りによって何年間耐用出来る建物かが決まっています。※3
- 経過年数・・・築年数のことです。
<再調整価格の算出方法>
再調整価格の算出方法は「延床㎡×○○万円」となります。○○万の数字は木造や鉄筋コンクリートなどの構造ごとに決まっています。
※2再調達価格 耐用年数
http://www.mlit.go.jp/common/001033819.pdf
※耐用年数詳細 国税庁ホームページ参照
https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34354.php
実際に計算してみよう
前項の計算式に当てはめて、実際に原価法を使い査定額を算出してみましょう。以下の物件を原価法で算出した時の査定額です。
- 木造一戸建て 築10年(耐用年数20年)
- 延床面積 100㎡
- 再調達価格は14万円/㎡
計算式に当てはめると
「再到達価格(100㎡×14万円)×((20年-10年)÷20年))」
となり、700万円が査定額になります。
注意点
原価法で算出した金額も、周辺事例比較法で算出したように、不動産会社で多少査定額が違う事があります。これを「需要率」と言います。
例えば、前項の例でいくと、売却しようとしていたエリアが「再開発地区」に認定され、地価が高騰していたとします。そうなるとエリア全体の価値が上がっているため、一戸建ての建物価値も上がります。その場合に「10%の需要率を見込める」と判断した場合には、「700万円×1.1」となり、査定額は「770万円」に上昇します。
収益還元法
収益還元法は主に投資用の賃貸マンションなどの査定時に使われます。
収益還元法の概要
収益還元法とは、賃貸マンションなどの投資用不動産で、その物件が将来生み出すと予想される利益を基に物件価格を算出する方法です。
収益還元法は少々複雑で「直接還元法」と「DCF法」と呼ばれる2種類の算出方法があります。ここでは、一般的な直接還元法の紹介をメインにします。
直接還元法
査定したい物件の利益とその利回りを基に算出します。
計算式は「収益(通常は1年間)÷還元利回り」となります。
収益とはその物件により1年間で得られる利益です。賃貸マンションであれば1年間の家賃収入から諸費用(管理費や修繕費など)を差し引いた金額になります。
還元利回りとは、自分自身が物件から得たい利回りを指します。要は希望利回りです。
直接還元法の計算
それでは、直接還元法を利用して実際に計算してみましょう。以下の物件を例に挙げます。
- 投資用の賃貸マンションを所有
- 1年間の賃料収入は180万円
- 1年間にかかった諸経費は20万円
- 還元利回りは7%を希望
上記の条件を計算式に当てはめると、
「(180万円-20万円)÷7%」となり、約2,280万円が直接還元法からの査定額になります。
直接還元法の注意点
直接還元法は、「収益予想」から算出する査定額です。つまり、その予想の精度次第で査定額が適正かどうかが決まります。査定額を算出する不動産会社はその収益予想に関して色々なデータを基に説明すると思います。大事なことは「自分の目」を持っておく事です。
さすがにエリアごとの賃料相場までは分からないと思いますが、少なくとも購入を希望しているエリアの周辺家賃相場くらいは調べておきましょう。
DCF法の概要
DCF法は概要だけご紹介します。DCF法は、その物件を保有している時に得られる利益(家賃収入など)と、その後の売却益を加味した査定額になります。要は、直接還元法に売却益も加味するという事です。
直接還元法でも「収益予想」をしていましたが、その上で「売却予想」も立てなくてはいけません。そのため、計算式が複雑になるので、計算式までは覚える必要はありません。但し、DCF法が何を基に査定額を算出するのかは覚えておきましょう。
まとめ
マンションの査定額だけで言えば、周辺事例比較法を理解しておけば十分かと思います。しかし、戸建てや投資用マンションの知識も欲しいという方は、原価法、収益還元法の概要も頭に入れておくと良いでしょう。
いずれのケースにしても不動産会社によって査定額が違います。上述した通り不動産会社によって補正が掛かるからです。その補正の精度を見極めるために、ある程度自分自身で相場観を持っておき、査定額の算出方法の概要を理解しておく必要があります。
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