一生「住む」場所であるマンションを買う上で、一番あってはならない事は「欠陥」です。本来快適に安全に過ごす場所であるはずの家が、欠陥がある事によって逆に危険にさらされてしまう事は絶対にあってはなりません。特にマンションは、そこに「共同」で「生活」している以上、欠陥があったからと言って簡単に引越したり建て替えたり出来るものでもありません。
今回は、そんな欠陥マンションの事例や見分けるポイントについてのお話です。
欠陥住宅とはどういう住宅か?
そもそも欠陥住宅はどういう住宅を指すのでしょうか。欠陥住宅とは、住居として最低限備えるべき大事な機能・性能を有しない住宅の事を指します。具体的には以下のような建物です。
- 雨漏りがする住宅
- 床の傾きがある住宅
- 壁や柱に傾きがある住宅
- 基礎が陥没している住宅
- 機密・断熱・通気不良である住宅
上記のような欠陥は一戸建ての建物にあるイメージですが、マンションも例外ではありません。特に、1995年に起きた阪神・淡路大震災の死亡者の9割近くは建物倒壊が原因と言われています。そのため、そもそも倒壊した多くの建物は建築基準法に定められた基準値未満の欠陥住宅だったのではないかという話が出てきました。その出来事から、欠陥住宅という言葉は爆発的に世に広まったのです。
欠陥マンション事例
先ほど言ったように欠陥住宅は、一戸建てだけでなく「マンション」でも多く見られます。その中でもニュースに取り上げられた程の、大きな欠陥が発覚したマンション事例を紹介します。
鉄筋不足超高層マンション
2007年11月に、千葉県市川市「JR市川駅」に建設中であった超高層マンション「ザ・タワーズ・ウエスト プレミアレジデンス(45階建て)」に欠陥が見つかりました。欠陥の内容は、設計上必要な鉄筋が128本も不足しているといったものです。
施工主は、スーパーゼネコンの清水建設を含む5社で構成されていました。施工主の話では、建設現場には担当者などが常駐して、各階ごとに写真を撮影するなどのチェックをしていたそうです。ただ、そのような監理体制にも関わらず全員がミスに気づかずに、今回の不備が発生したという事です。このケースの場合はゼネコンが全て保証して建築し直したとの事です。
白金の億ションでの施工ミス
2014年3月に当時建設中であった超高層マンション「グランドメゾン白金の杜 ザ・タワー」で鉄筋が足りない状態でコンクリートが打たれている事が発覚しました。発注主は積水ハウスで、設計・施工は大成建設が担当しています。
具体的に言うと、不具合は地下に設置した柱で見つかりました。合計34本ある柱のうち19本に不具合が発覚して、主筋を強化するための補助筋が設置されないまま一部コンクリートが打たれていたとの事です。この事例でも、発注主と施工主である積水ハウスと大成建設で手直し工事を行っております。
パークシティLaLa横浜の傾斜
これは、直近で最も注目された欠陥マンションです。既に竣工・分譲済みのマンションである「パークシティLaLa横浜」での欠陥です。2014年11月に住民から「渡り廊下のつなぎ目が2cmほどずれている」という通報があり、そこからの調査により欠陥があることが発覚しました。このマンションは2007年竣工なので、竣工後から7年後の発覚になります。
原因は、施工関係企業である旭化成建材が、マンションの建築には重要なセメント量のデータ改ざんをした事です。具体的には、基礎工事の際に打ち込む杭の合計52本のうち6本が強固な地盤まで届いておらず、2本が打ち込み量不足であったという内容です。
この事例では、売主である三井不動産レジデンシャルと、直接の原因である旭化成建材が保証しています。保証内容は「全棟の建て替え」「一部建て替え」「傾いた杭の補強」「販売元に売却して転出」というものでありますが、住民の意思がまとまらずに現在も水面下で話は進んでいます。
このように、有名な事例だけをピックアップしても多数の事例があります。また、これらの施主や売主は全て大手の会社だったので保証する事ができました。しかし、実際に「マンションの全棟建て替え」などの対応は中小企業では資金的に難しい企業も多いです。
そのため、私達が知らない所で、欠陥が見つかりその欠陥を保証する事ができずに揉めているマンションも世の中にはあることも考えられます。
欠陥住宅を見抜くチェックポイント
それでは、欠陥住宅を見抜くポイントをお話します。結論から言うと、先ほど話をした「杭打ち工事」や「コンクリートの打設」などを見抜く事がほぼ不可能です。その点は売主と施主を信じる以外にはありませんが、それでも注意しておくべきことはあります。
玉を置いて転がらないか
先ほどの「パークシティLaLa横浜の傾斜」もそうでしたが、きっかけは渡り廊下のつなぎ目のズレでした。そこから調査して杭に原因がある事が判明したように、目に見えない不具合は目に見える不具合と繋がっている事も多いです。
そのため、ビー玉やピンポン玉を床の真ん中に置いて転がらないかを確かめ床が傾斜している事が判明したとします。そうなると、床と繋がっているコンクリート部分などに傾斜がある可能性もあります。
水の水面が揺れていないか
例えば、水の入ったペットボトルを床に置いて何もせずに振動がないかを確かめてみましょう。振動があるという事は、躯体が弱く、そこから鉄筋不足や耐震性の問題に繋がる可能性もあります。
建具や柱が垂直であるか
クロゼットやキッチン台などの建具や柱が垂直であるかを調べましょう。施主に言えば水平器などを貸してくれると思います。もし歪みがあり垂直でなければ、配筋に問題がある可能性もあります。
フローリングの違和感
フローリングを踏んでみて浮き沈みに違和感がないかを確認しましょう。クッションフローリングという床の下にクッションが敷いてある床であれば多少沈みます。しかし、二重床であれば沈むことは少ないので、二重床で沈むという事は、腐食が起きていたり基礎部分に問題があったりする可能性もあります。
窓や扉の開閉
特に中古マンションは、窓や扉の動作確認は必ず行いましょう。開口部分は他の部分と比較しても歪みができやすい個所であり、歪みが出来ると窓や扉などの開閉に即時に影響します。そのため、開け閉めが正常に行えるかは必ず確認しましょう。
プロによるチェック
もし上記の事が契約前や契約後に判明した時に、自分自身では判断が付かない場合にはプロに相談しましょう。最近では、「ホームインスペクション」という住宅診断のサービスを行ってくれる業者も増えてきています。ホームインスペクション業者に依頼すれば、上記のような調査以外にも以下のようなことも行ってくれます。
- 床や体躯の欠損やひび割れ、腐食の調査
- 配管関係の詰まりの調査
- 機器関係の動作確認・設置確認
プロの目から見て、欠陥が発生しそうな場所を見極め調査してくれます。
まとめ
このようにマンションにも「欠陥」というものは存在します。上述もしましたが、100%欠陥を見抜いた上で入居することは不可能です。マンションに限らず、一戸建てでもビルでもそうですが、基礎などの躯体部分は地下に埋まっているからです。
そのため、表面上の不備からそれら「見えない部分」の不備を見抜くしかありません。その方法が上記の方法なので住宅購入前には是非試してみましょう。
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