「かぼちゃの馬車事件」をご存知でしょうか。不動産業界の中でも、特に賃貸やサブリースを主業としている業界では大きな話題になった事件です。この事件は、サブリースのリスクを理解することにもつながるので、物件オーナーも理解しておくべきです。
もちろん、「サブリース=リスクが高い」というわけではないので、この事件の全体像をつかみ、適切な投資を行いましょう。今回は、かぼちゃの場所事件の概要や、その対策について解説します。
サブリースとは何か?
かぼちゃの馬車事件の内容を知る前に、かぼちゃの馬車事件が起きた背景にある、「サブリース」について解説します。サブリースとは、不動産の賃貸方法の1つであり、不動産投資に良く利用される方法です。
サブリースについては、以下の点を理解しておきましょう。
- サブリースの仕組み
- 賃料の仕組み
- サブリースのメリット
- サブリースのデメリット
一般的な賃貸とは異なる仕組みになるので、一般賃貸との違い頭に入れて理解すると良いでしょう。
サブリースの仕組み
サブリースの仕組みを簡単にいうと、あなたが所有している不動産を「また貸し」してもらうことです。たとえば、マンションの1室を所有しており、それを賃貸物件にしようと検討しているとします。その際、サブリース業者のA社にサブリースを依頼すると、まずは自分の物件とA社の間に賃貸借契約を交わします。
その後、A社は賃借人を募集して、今後はA社と賃借人の間で新たに賃貸借契約を結ぶという流れです。つまり、実際に住んでいる賃借人と物件オーナーの間で契約行為はなく、その間にA社が入るということです。
賃料の仕組み
前項のような仕組みになっているサブリースにおいて、気になるのは賃料の仕組みだと思います。まず、物件オーナーはA社から賃料をもらいます。A社は、当然賃借人から賃料をもらうという流れです。
そして、物件オーナーは、A社に手数料として賃料の10%前後を支払います。このパーセンテージはサブリース会社によって異なるので、あくまで参考程度に認識ください。
たとえば、賃料10万円の部屋をサブリースに出すとします。その場合、賃借人からもらう賃料の10万円はA社がもらいます。その後、A社はオーナーに対して、10%の手数料を引いた9万円をオーナーに渡すというわけです。その10%の1万円がサブリース業者であるA社の収益になるという仕組みです。
サブリースのメリット
さて、物件オーナーがサブリースをするメリットは以下の点です。
- 手間がかからない
- 空室リスクがない
- 確定申告が楽
最も大きなメリットは、手間がかからないという点でしょう。オーナーはサブリース業者と契約するだけで、後は全てサブリース業者が行ってくれます。仮に、賃借人とトラブルになっても、基本的にサブリース業者が対応してくれます。
また、空室時に賃料収入がなくなることはありません。つまり、賃借人がいなくてもサブリース業者から賃料は入ってくるというわけです。これを「空室保証」ともいいます。さらに、物件をたくさん所有しているオーナーは、確定申告も楽です。
なぜなら、全てA社にサブリースを依頼すれば、A社からしか賃料をもらわないからです。仮にサブリースではなく個別に賃貸借契約を結ぶと、それぞれの賃借人からもらった賃料を合算して確定申告することになるので、手間が増えてしまうのです。
サブリースのデメリット
一方、物件オーナーがサブリースをするデメリットは以下の点です。
- 手数料がかかる
- 初期費用や更新費用をもらえない場合もある
- 家賃の下落リスクはある
- サブリース業者が破綻するリスク
まずは、手数料がかかるという点でしょう。仮にサブリースをしなければ、手数料を取られずに満額賃料収入を得られます。また、礼金や更新料などは通常は物件オーナーがもらいますが、サブリースの場合には、それらの初期費用や更新費用はサブリース業者が徴収するケースもあります。
さらに、空室時も賃料がもらえるとはいえ、その賃料は当然下落することもあります。これはサブリースをしなくても起こる現象ですが、サブリース業者が間に入っている分、サブリース業者が賃料を下げる交渉をしてきます。その点も、サブリースならではのデメリットと言えるでしょう。
最後の「サブリース業者が破綻するリスク」という点は、次項解説する「かぼちゃの馬車事件」と深く関係する部分ですので、詳しくは次項で解説します。
かぼちゃの馬車事件に見るサブリースについて
さて、サブリースの仕組みやメリット・デメリットが分かったところで、本題である「かぼちゃの馬車事件」を解説します。まずは、かぼちゃの場所事件の概要や経緯を理解しましょう。その上で、この事件から考えるべきことを解説していきます。
かぼちゃの馬車事件の概要
かぼちゃの馬車事件とは、スマートデイズというという女性用シェアハウスを展開している会社が、資金繰りの悪化を理由にオーナーへの賃料支払いを停止した事件です。スマートデイズのシェアハウスのブランド名が「かぼちゃの馬車」だったことから、「かぼちゃの馬車事件」と呼ばれています。
この女性用シェアハウスのオーナーは、スマートデイズをとサブリース契約を結んでいました。そして、本来であればスマートデイズから賃料を毎月もらえるものの、スマートデイズ自体の経営が成り立たなくなり、オーナーにお金を支払えない状態になったということです。
つまり、オーナーからすると、「シェアハウスを建築するためにローンの支払いはあるものの、賃料が入ってこない」という状態ということです。この点を踏まえ、東京国税局査察部が、スマートデイズを一斉査察していたというのが、「かぼちゃの馬車事件」の概要です。
事件が起きた経緯
スマートデイズは2012年に創業した会社であり、2014年4月より「かぼちゃの馬車」ブランドを展開していました。その際、以下をアピールして、顧客の拡大につなげていきます。
- 30年一括借り上げ
- 自己資金ゼロ
- 空室リスクゼロ
2017年8月には管理物件数は800戸を超え、部屋数も1万室以上にまで事業を拡大していきます。これは、非常に順調なペースと言えるでしょう。しかし、急速に事業を拡大するものの、入居者の募集が追い付いていないというのが実態でした。
2017年10月には、入居率は40%と非常に低い数字です。スマートデイズは空室でもオーナーに賃料を支払う必要があるので、入居率が低いほど赤字は拡大していきます。案の定、支出が収入を大幅に上回り回転資金がなくなり、オーナーへ賃料を支払うことができなくなってしまいました。
さらに、銀行から融資を受けるときに、オーナーの資金を水増しして、融資を受けやすくしたともいわれています。また、実際価格より高い金額をオーナーに提示して、シェアハウスを建築していたという情報もあります。これらが、かぼちゃの場所事件が起きた経緯です。
かぼちゃの場所事件で考えるべきこと
この事件を受けて考えるべきことは以下の点です。
- 自ら予算組みをすること
- 相場金額を把握すること
もちろん、今回の事件はスマートデイズが完全に悪いです。しかし、物件オーナーの立場でいうと、自分の身は自分で守るために対策しておくべきだったともいえるでしょう。
自ら予算組みをすること
まず、「銀行の融資が通る=返済できる金額」というわけではありません。そもそもこの事件では、スマートデイズが資金を水増ししていた可能性もありますが、それでも自分で予算組みする必要があります。つまり、収入と支出を考えて、自分がどのくらいの物件に投資した方が良いかという点を考えるということです。
サブリースの場合は空室保証があるので、どうしても投資金額が大きくなりがちです。しかし、現実的にサブリース会社の破綻などがあるので、空室がある程度続いても資金的に問題ない範囲の投資額が望ましいです。
相場金額を把握すること
また、相場より高い金額で、スマートデイズがシェアハウスをオーナーに建築させたとありますが、この点は事前に防げたことです。もちろん、素人である物件オーナーに、細かい建築費用は分かりません。
しかし、ほかのシェアハウスを行っているサブリース会社と比較してみるなど、相場金額を把握する方法はいくらでもあります。特に、今回の事件では、実勢価格の倍以上の金額を支払ったオーナーもいたくらいなので、この点はオーナー事前に調べておくべきだったと言えるでしょう。
まとめ
今回のかぼちゃの場所事件は、サブリースのデメリットである「サブリース会社の破綻」という点が現実になった例です。破綻しないまでも、事業が悪化して資金繰りに窮せば、このような事態になってしまいます。
しかし、サブリースが危険という認識ではなく、サブリースのリスクを少しでも回避するための対策を講じることが重要です。
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