不動産売却したら確定申告が必要?譲渡所得・譲渡損失による申告や損益通算・税理士の選び方の解説【2024年版】

不動産売却したら確定申告が必要?譲渡所得・譲渡損失による申告や損益通算・税理士の選び方など損しないための徹底まとめ

不動産を売却した時には確定申告が必要になります。売却益が出た時には税金を支払うために確定申告する必要がありますし、税金の控除を受ける場合でも確定申告は必要になります。

不動産所得の扱いは、サラリーマンの給与所得と違う点にも注意が必要です。

これらの事を踏まえ、今回は不動産を売却した時の税金の仕組みや確定申告についてまとめています。

目次

不動産売却の譲渡所得税について

譲渡所得

それでは、まず譲渡所得税についてです。そもそも譲渡所得とは、「不動産を売却した時に得た利益」となり、税法上は所得として扱われます。

給与所得などと同じ扱いになりますので、当然税金が掛かってきます。譲渡所得を計算する方法は単純に「売却価格-購入価格」ではなく、以下のような計算式になります。

譲渡所得の計算式

計算式:(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時のマンション価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用))

言葉で表すと、「諸費用を引いた売却価格から、諸費用と減価償却費(後述します)を引いた購入価格の差額」という事になります。少々分かりにくいので、具体例でご説明します。

例えば、以下のようなマンションを売却した時の譲渡所得を計算してみましょう。

「(3,000万円-120万円)-(2,200万円+110万円-330万円)」となり、譲渡所得は900万円です。これに所定の税率が掛かってきます。税率については諸条件によって異なってきますので、下記ホームページよりご確認ください。

※参考URL 国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm

諸費用を把握

諸費用を把握

売却時の諸費用をキチンと把握しておく事で、譲渡所得を低く抑えられるのです、譲渡所得を低く抑えられるという事は、自ずと譲渡所得税を低く出来るという事になります。売却時に計上できる諸費用は以下の通りです。

  • 不動産会社に支払う仲介手数料
  • 登記関係費用(抵当権抹消登記、司法書士報酬料)

仲介手数料と登記関係費用について

上記①の仲介手数料はイメージしやすいと思います。不動産会社に支払う「物件価格×3%+6万円(物件価格が税抜き400万円以上の場合)」の仲介手数料の事です。また、登記関係費用は、抵当権抹消費用と司法書士に支払う報酬です。

抵当権抹消登記は住宅ローンの残債がある方のみに発生しますので、住宅ローンの残債が無い方や、そもそも現金で購入した方は登記関係費用自体発生しません。抵当権抹消登記は基本的には司法書士が行いますので、その司法書士にお礼として支払う報酬も登記関係費用の中に含まれます。相場としては5万円前後になります。

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減価償却費用の計算方法

減価償却費用の計算方法

減価償却費とは、「経年劣化」という考えの元、毎年不動産の価値が下がっているので、その下がった分の価値を不動産価格から差し引く費用のことを言います。

この費用は、上述の例からも分かるように非常に大きな額になりますので、譲渡所得を算出する際には重要になります。

減価償却費の計算方法は「定額法」と「定率法」の2種類に分かれますが、平成10年4/1以降の建物に関しては「新定額法」のみの適用になりましたので新定額法のご説明をします。

新定額法の計算式は「マンション購入金額×償却率※」となります。

例えば、前項の例のように、購入価格2,200万円、築10年、鉄筋コンクリート造マンションの減価償却費用は、以下の通りです。

「マンション建物購入金額償却率※」
「2,200万円 × 0.015 」×10年

となり、1年ごとに計上できる減価償却費は「33万円」となり、それを築10年の時に売却をしたので、330万円を減価償却費として差し引きます。この金額によって譲渡所得は大きく変わりますので理解しておきましょう。

※償却率(新定額法)
木造「0.031」軽量鉄骨「0.025」鉄筋コンクリート造「0.015」
※減価償却について 国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/h30/0018008-045/05.htm
※償却率について 国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2106.htm

譲渡所得税の控除について(特別控除)

譲渡所得税の控除について(特別控除)

譲渡所得税は大きな税額になりますが、周りで住宅を売却して税金を支払った方は少ないと思います。理由は、控除額が大きいからです。控除になる条件としては、投資用ではなく居住用の不動産でなければいけないなど、色々な条件があります。(特別控除)

それらの条件を全てクリアした時には3,000万円までの譲渡所得には税金は掛かりません。つまり、先ほどの900万円の譲渡所得には税金が掛からないという事になります。

特別控除を受ける条件

特別控除を受けるためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。条件が多く且つ複雑なので詳細は国税庁ホームページを確認頂きたいのですが、主要な点のみ以下に要約します。

尚、以下の要約に「住まなくなった日から3年目の12月31日までに」という文言が出てきますので、前もってこの文章の意味を解説しておきます。

この文章の意味は、例えば2016年4月に住まなくなった(住民票を移した)とします。そうすると2019年12月31までが、この期間に該当するという意味です。

特別控除を受ける条件
  • 自分の自宅を売却するか、自分が権利を有している借地権を売却する
  • 住まなくなった日から3年目の12月31日までに売る
  • 仮に家を解体して取り壊している場合には、「取り壊した1年以内の売却」、「売却するまでに貸駐車場などの、他の用途で利用していない」という2つの条件が加わる
  • 売却した年の過去2年間に、住宅売却に対する特例(この特別控除含む)を受けていない
  • 親子や夫婦など特別な関係がある人への売却ではない

主にはこのような条件があります。基本的には、「居住用の家」を「第三者に売却」した時に適用できる特別控除です。

注意するべき点は、「昔住んでいたが今は住んでいない」という時や、「直近で何か特例を受けた」または、「年間の半分くらいを過ごす別宅を売却する」などの時です。

こういう時は、税務署の判断によっては上記の条件から外れる可能性があります。そのため、このような不動産を売却する時には国税庁ホームページでしっかり確認の上、それでも不明点があれば最寄りの税務署に確認してみましょう。

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特別控除を受けられない時はどういう時?

前項の特別控除が受けられない時で、良く例に挙げられるのは以下のような状況の時です。

  1. この特例を受けるためだけに入居する
  2. 仮住まいなど一時的な入居である

上記①②の時には、この特別控除が受けられない可能性が高いです。基本的には投資用物件は特別控除の対象ではないので、この特別控除を受けるためだけに入居する①のような事例は、税務署の判断で特別控除対象外になることがあります。

税務署がどのように判断するかと言うと、基本的には住民票の移動履歴や売買契約書などの公的書類で判断します。とは言え、明確な決まりがあるワケではないので、少しでも特別控除の対象外になる可能性があれば、前項と同様に最寄りの税務署に確認しましょう。

居住用の不動産を売却した利益が、3,000万円以上になる事は中々ありません。それ故、住宅を売却して税金を支払った方は少ないのです。諸条件については、譲渡所得の税率と共に下記ホームページよりご確認ください。

※参考URL 国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm

不動産売却の譲渡損失について

不動産売却の譲渡損失について

譲渡損失とは、上述した譲渡所得の計算式に当てはめた時に、損失が出た場合を言います。その場合にはキチンと申告をすれば損失を計上でき節税にも繋がります。

譲渡損失が発生した場合には、最大3年間、他の不動産所得や事業所得、給与所得と、譲渡損失額を通算して所得を計算する事が出来ます。つまり、他の所得を減らし、税金を減らす事が出来るということです。

しかし、それには、住宅ローンがまだ残っている事や、居住用であり、長期譲渡(5年以上保有)に限る、などの様々な諸条件がありますので、詳細は下記ホームページでご確認ください。

※参考URL 国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3203.htm

不動産売却の確定申告についての詳細

上記でお話をした、譲渡所得が出た場合の納税、譲渡所得の控除、譲渡損失の損益通算の手続きは、確定申告を行わなければいけません。特に、譲渡所得の3,000万円までの控除に関しては忘れがちなので注意しましょう。

そもそも確定申告とは?

そもそも確定申告とは?

確定申告とは前年の収入を翌年に申告し納税をする作業になります。

サラリーマンであれば、会社が毎月の給料から源泉徴収という形で税金を徴収し、代わりに納税しています。それ故、確定申告に馴染みがない方もいると思うのでしっかり学んでいきましょう。

確定申告をする時期

確定申告をする時期は毎年2/16~3/15の期間です。

この期間に、前年の1/1~12/31までの期間の所得を計算し、申告する必要があります。

例えば、2021年5月にマンションを売却して800万円の譲渡所得が発生したとします。この額であれば3,000万円の控除範囲内なので、2022年2/16~3/15の期間に確定申告をすれば税金は0円になります。

確定申告をする方法としては、基本的には税務所へ書類を持ち込みますが、他にはネットから提出(別途機器が必要)する方法や、夜間に税務署のポストに投函をする方法、郵送で届ける方法があります。

中々平日の日中に時間が作れないサラリーマンには有り難いです。

税理士に依頼する

税理士に依頼する

確定申告は初めて行う人にとっては各計算や書類作成などが非常に煩雑です。ここまでのお話で分かるように、譲渡所得の計算方法を間違えたり、税率を勘違いしたりしてしまうと、そもそもの税率が大きいので想定より遥かに高い税金を支払う事もあります。

更に、損益通算をする際にはその後何年か税金が安くなる可能性もありますので、しっかり所定の手続きを踏んだ確定申告をする必要があります。

とは言え、今はインターネット上から作成マニュアルに沿って簡単に確定申告を作成することができます。

例えば、上述した「譲渡所得の3,000万円控除」は様々な条件があり、減価償却費用の算出方法などは非常に難しいと言いました。

しかし、インターネット上から行えば、記載してある各条件に○×をしていくと「3,000万円の控除が可能」「減価償却費用は○○万円」などと提示されますので、一昔前までと比べて格段に確定申告しやすくはなりました。

但し、それでも確定申告を第三者にお願いしたい場合には、税理士に依頼する方法もあります。

メリットとしては「書類作成の手間がかからない」、「税務署のやりとりも税理士で行ってくれる」、「節税のアドバイスを貰える」という点です。特に損益通算はどの所得から行えば良いのかなど、アドバイスを貰わないと難しいこともあるので、そういう時は税理士に依頼すると良いでしょう。

デメリットとしては「費用」が挙げられます。売り上げや確定申告書類のボリュームにもよりますが、数万円~10万円程度の費用がかかってきます。

確定申告の時期には税務署が無料で行う「税理士相談会」などもありますので、そちらも活用してみてはいかがでしょうか。

不動産売却したら確定申告が必要?のまとめ

いかがでしたでしょうか。不動産の売却益にここまでの税金が掛かり、例え控除される時でも確定申告が必要なことに驚いた方もいるのではないでしょうか。控除される条件も細かく取り決められていますし、税率も不動産の種類によって様々です。

全てを把握している必要はありませんが、一連の事項を把握しておかないと「控除されると思っていたら控除されずに多額の税金が掛かった」という事態になりかねません。心配であれば税務署に確認をするか、税理士に相談をし、キチンと税額を計算し確定申告を行いましょう。

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